毎週3分、情シスドリル コレ1枚で分かる「最新ITトレンド」:即席!3分で分かるITトレンド(4/4 ページ)
ITトレンドは、個々のテクノロジーの意味を把握するだけではなく、互いの相関関係や背後にある社会的な要請を知ることで、より深く理解することができます。今回は、「IoTとソーシャルメディア」「クラウド」「ロボット」「サイバーフィジカルシステム」について学びましょう。
現実世界とサイバー世界が緊密に結合された「サイバーフィジカルシステム」
IoTやソーシャルメディアによって現実世界はデジタルデータ化され、インターネットによってクラウドすなわちサイバー(電脳)世界に送り出されています。つまり、サイバー世界には、現実世界のデジタルコピーが作られていくのです。このような現実世界とサイバー世界が緊密に結合された仕組みが「サイバーフィジカルシステム(CPS:Cyber Physical System)」です。
このデジタルコピーされたデータを分析し、さまざまな予測やシミュレーションを行えば、そのデータをもたらした個人の趣味嗜好、行動特性、あるいは行動を予測できます。さらに、膨大な数の人間の行動や社会での出来事を調べ上げ、未来の予測もできるようになるかもしれません。運送業務であれば、無駄のない最適な流通経路や配車計画を策定できるでしょう。工場であれば、もの作りの手順や使う設備の最適な組み合わせを把握できるでしょう。
つまり、現実世界では決してできないさまざまな実験を、「現実世界のデジタルコピー」を使って何度も繰り返しシミュレーションし、最適解を見つけ出すことが可能になるのです。
IoTデバイスの台数は今後さらに増加し、ソーシャルメディアでのやりとりも盛んになるでしょう。そうなれば、現実世界のデータはますます増大し、その粒度もきめ細かくなっていきます。これによって、より精緻な現実世界のデジタルコピーがサイバー世界に構築され、より緻密な予測や最適化、アドバイスを行えるようになります。そして、その結果の行動を再びIoTによって取得し、サイバー世界にフィードバックすることで、さらに予測や最適化の精度は高まります。
このような現実世界とサイバー世界が一体となった仕組みが、サイバーフィジカルシステムなのです。
ITトレンドとITビジネス
さまざまなテクノロジーは、それ自身が独立して存在しているわけではありません。互いに連携しながらそれぞれの役割を果たしています。私たちは、この一連のつながりを理解して初めて、テクノロジーの価値を理解できます。
ここに紹介したことは、必ずしも全てが現時点で実現しているわけではありません。しかし、「トレンド=過去から現在を通り越して未来に向かう流れ」から見れば、近い将来必ず実現するものです。
ITビジネスは、このようなトレンドの中にあります。冒頭でも説明したように、これまでの常識を大きく塗り替えるテクノロジーが重なり合い、影響を及ぼし合っています。この様相は、かつてとは明らかに異なる状況なのです。
また、ITとビジネスがこれまでになく深く結び付いていることも、かつてとは大きく異なることです。
これまでのITは、主に既存業務の生産性や効率を高める手段として使われてきました。例えば、銀行のシステムや航空券発券の予約システムなどのITを前提としたビジネスは、多くが業務の効率化や機能の拡張を目的としていました。しかし今、「ITを前提に新たなビジネスを創る」時代へとシフトし、ITの役割は広がりつつあります。全く新しいビジネスや生活が、ITによって生み出されつつあるのです。
ITの適用範囲は大きく広がり、ITと日常が密接に関わることで、活用の選択肢は増えていきます。「ITの民主化」といってもいいのかもしれません。ここにも、これまでとは異なるITビジネスの可能性が広がっています。
トレンドは時流である
この流れに乗るか、押し流されるか――。ITビジネスは今、そんな選択を迫られているのかもしれません。
著者プロフィル:斎藤昌義
日本IBMで営業として大手電気・電子製造業の顧客を担当。1995年に日本IBMを退職し、次代のITビジネス開発と人材育成を支援するネットコマースを設立。代表取締役に就任し、現在に至る。詳しいプロフィルはこちら。最新テクノロジーやビジネスの動向をまとめたプレゼンテーションデータをロイヤリティーフリーで提供する「ITビジネス・プレゼンテーション・ライブラリー/LiBRA」はこちら。
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