1日約12円でユーザー保護、セキュリティソフトの仕事とは?
カスペルスキーが個人向けセキュリティソフトの最新版を発表。Webブラウザのセキュリティを強化する新機能を搭載した。
カスペルスキーは10月13日、Windows/Mac/Android対応の個人向けセキュリティソフトの最新版「カスペルスキー 2016 マルチプラットフォーム セキュリティ」を発表した。15日からオンラインショップ、11月12日から店頭で販売を開始する。
新機能ではユーザーの意図しないWebブラウザの設定変更を修正する「システム変更コントロール」や、Web閲覧の行動追跡を防止する「Webトラッキング防止」、ユーザーポータルの「マイ カスペルスキー」が追加された。
システム変更コントロール機能は、不正プログラムなどユーザーが意図せずにWebブラウザのスタートページが変更されたり、プラグインなどがインストールされたりした場合などに、設定を従前の状態に戻すことができる。Webトラッキング防止機能ではユーザーの閲覧履歴に応じて広告が表示されてしまう状態を回避する。「マイ カスペルスキー」ではセキュリティソフトを利用している複数デバイスをリモートから管理でき、ウイルススキャンや定義ファイル更新、ライセンス更新といった操作をインターネット経由で行える。
最新版はWindows 10やOS X El Capitanに対応。11月以降にAndroid 5.1にも対応する予定。オンラインショップでの販売価格は10台までインストール可能な「プレミアムライセンス」1年版で6980円などとなっている。
対策費用は1日あたり11.8円
例年9月から10月は、セキュリティソフトメーカー各社が個人向け製品の最新版を発表する時期となっている。ただ、ここ数年ではメディア向けに発表会を開くケースが減少。あるメーカーの広報担当者はウイルス対策など製品の「主要機能での差別化が難しくなっている」と話し、製品のコモディティ化が背景にある。
同日の記者会見ではカスペルスキーの川合林太郎社長がセキュリティソフトの動作内容を説明。2014年に同社が検知した脅威はのべ61億6723万3068件で、2015年上半期はこれを上回るペースという。脅威の勢いが増す中でセキュリティソフトは、インターネットやメール閲覧、ファイルのダウンロードなどの際に複雑かつ多数の検査を瞬時に行っている。
川合氏は、「セキュリティソフトがこれだけの仕事をしてようやくユーザーを保護している。当社には3000人の社員がいるが、このうち1000人がユーザー保護のための業務を担当しており、その費用は1ユーザーにつき1日あたり11.8円(1台3年版ライセンスの販売価格の場合)になる」と説明した。
セキュリティソフトには基本機能のみを無償提供するものもあり、一部ユーザーには「わざわざ購入する必要はない」という意識も。少し前にはセキュリティソフトメーカー幹部の「ウイルス対策ソフトが機能しなくなった」という発言が話題になった。
しかしメーカー側の主張としては、基本機能はあくまで定義ファイルで検出可能な脅威への対策であり、定義ファイルでは検知の困難な未知のウイルスや高度な手法を組み合わせて実行される脅威への対策に各社の強みが現れるという。製品としては「統合セキュリティソフト」というカテゴリになる。
川合氏は同社製品の優位性を軸に説明したが、統合セキュリティソフトの積極的な利用をユーザーに呼び掛けたい狙いがあったようだ。
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