数学女子はSEになり、やがてチームを信頼し凄腕のプロマネになる――土本光恵さん:「プロジェクトマネジャー」の極意(1/3 ページ)
IT系のプロジェクトマネジャーというと、気苦労が多く“自分には向かない”と敬遠してしまう人もいるかもしれない。しかし、その仕事を楽しめる人がいるのも事実だ。10年近くプロマネを務めている“プロ”に、その極意を聞いてみた。
「『システムなんて動いているのが当たり前』と思う人もいるかもしれませんが、決して当たり前ということはなく、その裏にはいろいろな苦労があるんです」――こう話すのは、IBMでプロジェクトマネジャーとして働く土本光恵さんだ。
彼女が手掛けているのは、ITアウトソーシングのプロジェクト。日本で本格的な展開が始まったのは1990年代後半からと長い歴史があり、クラウド全盛の最近では、グローバル進出した企業がさらに拡大したり、各国にあるシステムのガバナンスを強化するために利用するケースが多いという。
土本さんは現在、サーバ運用におけるアウトソーシングのプロジェクトを担当しており、日本人と中国人合わせて70人のチームをリードする役割だ。さまざまなプロジェクトのマネジャーを歴任してきた彼女だが、SEとして入社した当初は「管理をする立場にあまり興味を持てなかった」そうだ。
プロマネが楽しくなったきっかけ
中学生のころから好きだった数学の知識を深めようと、大学では数学を専攻していた土本さんが日本IBMの門をたたいたのは1999年のこと。大学院に進むか、就職するか。進路を考えようとさまざまな社会人の先輩と話しているうちに、同社の名前を聞き興味を持ったという。
「一般的にOB訪問というと若手の方が出てくるケースが多いのですが、IBMの場合は40歳くらいの人が数名出てきて驚いたのを覚えています。皆さん落ち着いた雰囲気で、積極的に会社を売り込まなかったところが、逆に印象に残りました(笑)」(土本さん)
IT業界を志望したのは「自らが学んでいた分野に近く、伸びる業界と思ったから」という。システムエンジニア(SE)を志望し、晴れてSEに配属となった彼女を待っていた仕事はサーバの構築と設計だった。今まで全くなじみのない世界だったが「新しいことを理解するのは、点と点がつながる感覚があり楽しかった」と振り返る。
そして社会人として5年がたったころから、徐々にチームリーダーやプロジェクトマネジャーを任されるようになった。入社当初は、技術者としてキャリアを積みたいと考えていたものの、いざチームリーダーやマネジャーを務めてみると「できることや責任範囲が広がったのがうれしい」と感じたそうだ。
「最初のうちは、自分より年上の人や、専門性が高い人に指示をしていいものかと悩むことが多かったです。そんなときに“指示することが仕事”だと上司から言われたことで、指示は役割なんだと考えられるようになりましたね。それ以来、気後れするときは“仕事だから”と考えるようにしています」(土本さん)
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