教員にも“1人1台タブレット”、「iPad用業務アプリ」を内製する中学校:開発者は1人の職員(2/3 ページ)
学校での“1人1台iPad”と聞くと、生徒への配布をイメージする方が多いだろう。しかしタブレット活用が進んでいるのは、生徒だけではない。教職員全員がiPadを使う桜丘中学・高等学校では、職員自ら開発したiPadアプリを業務の課題解決に使っている。
学校説明会でFileMakerアプリケーションにチャレンジ
同校の学校説明会は200〜300人を超える受験生(とその親)が集まる一大イベントだが、中でも個別入試相談の対応に苦労していたという。複数の職員がさまざまな教室で面談を行うが、「各職員が大きなノートPCを持ちこみ、配線を整えるなどの準備に多くの時間がかかっていた」と西岡さんは言う。
このシステムをiPadアプリにしたところ、運用が大きく変わった。教員はiPadだけを持って身軽に教室を移動できるようになり、配線などの準備も必要なくなったため、好評だったという。翌年からは面談の進行状況もiPadで共有されるようになり、待ち時間の短縮につながった。
「今までは教室をのぞきに行かなければ状況が分かりませんでしたが、今ではiPadの画面を見れば状況が分かります。このようにスムーズに情報共有ができるようになるのがアプリ化のメリットですね」(西岡さん)
リアルタイムな情報共有で業務がスムーズに
少人数での情報共有で効果が上がり、手応えを感じた西岡さんは、より大規模な情報共有にチャレンジすることにした。それが入学試験での活用だ。
受験生の基本情報や成績データの入力、入試当日の受験生の出欠管理、試験監督の配置や問題配布の確認、そして申し送りなど、入試で発生する作業は幅広い。桜丘中学・高校はこうした校務の大部分を紙で行っていた。「フロアに係を配備し、リレー式に各情報を伝達していました。とにかく学校全体がバタバタするあわただしい一日なのです」(西岡さん)
わざわざシステムを作らなくても……と思う人もいるかもしれないが、同校は複数の建物が連なる複雑な校舎であるため、人の動きが見えにくく、情報共有が難しいのだという。
こうした情報の共有をiPadのアプリで行えるようにしたところ、校内での動きが可視化されて一元管理ができるようになった。さらに2014年度の入試では、入試当日に加えて前日の会場設営の準備にもFileMakerアプリケーションを導入。徹底的にアナログな手段での伝達を減らし、作業の効率化を図った。
「少しずるい考えかもしれませんが、入試関係の業務は全教員が携わることになるため、普段iPadを使っていないような人にも使ってもらえるチャンスになります。iPadの魅力を知ってもらい、他の場面でも使ってもらえないかという狙いもありました」(西岡さん)
こうして校内のさまざまな問題をインハウス開発のアプリケーションで解決していったところ、最近では、教職員から「こういう問題ってFileMakerで何とかならないか」という質問が増えたという。iPadを使った業務効率化に対して、意識が高まりつつある様子がうかがえる。
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