Salesforce.comが狙う「世界第4位」とその先:Weekly Memo(2/2 ページ)
Salesforce.comが躍進を続けている。その強さの秘密はどこにあるのか。先週、同社の日本法人が開いたプライベートイベントを取材して探ってみた。
世界第1位のソフトウェア企業を目指してM&Aに動くか
ブロック氏はまた、16年前に「クラウドサービス」のコンセプトを打ち出したSalesforce.comが、IT市場に次の3つのイノベーションをもたらしたと説明した。
その3つとは、インフラではなくイノベーションに注力し、信頼性の高いエンタープライズクラウドを提供する「新しいテクノロジーモデル」、従量課金や大規模なエコシステムによって顧客企業のビジネスを成功に導く「新しいビジネスモデル」、そして、就業時間や株式、製品のそれぞれ1%に相当するリソースを社会貢献に役立てる「新しい社会貢献モデル」である。
こうしてみると、徹底した顧客指向やクラウドサービスによるイノベーションが、同社の成長を支えていると見て取れる。さらに同社がこれまで実績を上げてきたCRM(顧客情報管理)やSFA(営業支援)という領域が、企業のデジタル化とともに重要性を増してきていることが挙げられよう。
ただ、Salesforce.comならではの強さの秘密はどこにあるのか。今回のイベントをはじめ、これまでの取材を通じて筆者が強く感じるのは、顧客に寄り添う姿勢とそれを見せる力だ。とりわけ見せる力では、今やIT分野で世界最大規模のイベントになったDreamforceや世界主要都市で実施しているWorld Tourが同社の真骨頂だろう。
こうした大きなイベントは競合他社も行っているが、Salesforce.comのイベントはまさしく「顧客が主役」という印象だ。今回の東京でのイベントの基調講演だけをとっても、さまざまな顧客の代表者がステージに立ち、単に活用事例だけでなく、それで自分たちが何を目指しているのかといった想いを、ブロック氏などとのやり取りの中で熱く語っていた。印象強いのは、その熱い想いを共有しようとする会場全体の高揚感だ。この雰囲気はSalesforce.comのイベント独特のものといえる。
同社がこうした見せる力を持ち得たのは、何と言ってもCEOのベニオフ氏の卓越したプレゼンテーション力によるところが大きい。優れた営業マンおよびマーケターでもあり、ブランディングを熟知した同氏の存在そのものが、同社の強さの源泉ともいえよう。
そんなSalesforce.comに今後大きな変化が起こり得るとすれば、新たなデジタル時代に向けた業界再編の中でM&A(合併・買収)に動き出すときだろう。実際、今春にも同社の身売り話が浮上したのは記憶に新しい。ただ、今となってはそれもベニオフ氏の巧妙なマーケティングだったようにさえ感じる。
とはいえ、同氏が世界第1位のソフトウェア企業を目指しているならば、近い将来、大胆なM&Aに動く可能性も大いにあり得ると筆者は見る。そうしたダイナミックさを予感させるのも、Salesforce.comの強さの秘密の一つなのかもしれない。
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