“非エンジニアの女性”が1カ月半で基幹アプリを構築するまで(2/2 ページ)
ExcelとGoogleドキュメントの顧客管理はもう限界、でも基幹システム導入の手間もコストもかけられない――。そんな課題を抱えたスタートアップは、なぜ、1カ月半で“脱Excel”の基幹アプリを開発できたのか。
ビジネスサイドで開発・運用できるソリューションを選定
リミアでは、ExcelとGoogleドキュメントに代わるアタックリスト管理のシステム基盤を導入すべく、クラウドサービスの検討を開始。候補として挙がったのは、CRM/SFA分野で世界的なシェアを持つ「Salesforce」、クラウド型名刺管理ベースの情報管理基盤の「Sansan」、そしてサイボウズのアプリ開発プラットフォーム「kintone」の3つだった。
候補選びで重視したのは、“現場のスタッフだけで開発、運用できるかどうか”だったと安野氏は振り返る。立ち上げまもないリミアは、さまざまな視点からKPIを設定し、細かくPDCAを回しながらビジネスを進めているため、アタックリストの項目が頻繁に変更される。こうした変更に現場スタッフが手間を掛けずに対応できる製品を求めていたという。
「当社は多くのエンジニアを抱えていますが、彼らの時間は、お客さま向けのサービスであるLIMIAの開発になるべく多く割くべきだと考えています。変更や削除が頻繁に起こる情報を扱いながら、状況に応じてエンジニアの手を借りなくてもビジネスサイドでアプリを作成・更改していけるライトさがkintoneを選んだ決め手でした」(安野氏)
コストも比較対象の大きな要素となった。
「利用料金を見積もったところ、1アカウントあたり月額約3万円ほどの経費が掛かるものもありましたが、kintoneは1アカウントあたり月額1500円ほど。立ち上げ時には、できるだけ人材に投資したかったので、システム経費をどれくらい抑えられるかも重要でした」(安野氏)
開発未経験者が短期間で基幹アプリを開発
kintoneの導入を決めたリミアでアプリ開発を担当したのは、リミア 事業推進グループの渡邊真紀子氏。エンジニアとしての経験はなく、アプリの開発とも無縁な人物だ。
「WordやExcelを扱うような感覚で操作できたので、プリセットされていた議事録のテンプレートをカスタマイズしてアタックリストを作りました。分からないことがあっても、FAQを参照したり、他のkintoneユーザーが提供しているハウツーを検索したりすることで解決できました」(渡邊氏)
渡邊氏は、わずか1カ月半の試用期間のうちにアタックリストを完成形に近づけ、さらに商談管理や与信管理などのアプリを作成。これまでExcelとGoogleドキュメントで管理していた全ての顧客データベースを移行した。試用期間から本契約に切り替えた時点では、既に本番運用が始まっていた。
最大の効果は、必要な業務アプリを素早く開発でき、ニーズに応じて現場サイドですぐにカスタマイズできることだが、それ以外の効果もあるという。
「営業・マーケティング部門は外出が多く、外で仕事をすることも少なくありません。開発した業務アプリは、スマートデバイス向けのUIが自動で生成されるので、会社にわざわざ戻ってPCで入力作業を行うようなこともなくなりました」(安野氏)
今後は進捗管理や営業管理、プロジェクト管理などにもkintoneを利用しようとアプリの作成を進めているという。
ビジネスの成功を左右するアプリ基盤の選定
リミアはERPのような基幹システムは導入しておらず、kintoneによるアタックリストこそが基幹アプリなのだという。つまり、エンジニアではないビジネスサイドのスタッフが、わずか1カ月半で基幹アプリを構築し、運用したというわけだ。
今回の事例は、ビジネスをできる限り早期に立ち上げることが求められるスタートアップ企業にとって、短期間のうちに業務に必要なアプリを構築できるシステム基盤と開発環境がいかに重要であるかを教えてくれるものだ。
リミアにとってはkintoneが最適解となったが、現在はビジネスの規模や種類、期間と予算によってさまざまな選択肢がある。単にシェアや評判だけで選んでしまうのではなく、自社にとってどのソリューションがふさわしいのか、よく吟味してから選定、導入することをお勧めしたい。
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