HALは実現するか――研究者6人が語るAIの現状と将来:Weekly Memo(2/2 ページ)
機械学習をはじめとしたAI(人工知能)技術を活用しようという動きが活発化している。この分野の第一線の研究者たちは、現状や将来をどのように見ているのか。
「2001年宇宙の旅」のHALコンピュータは実現するか
これだけの第一線の研究者が揃った機会なので、AI技術の将来はどうなっていくのかという視点を踏まえて筆者は質疑応答で、「2001年宇宙の旅という映画に出てくるHALのようなコンピュータは実現するか」と聞いてみた。すると4人が次のように答えてくれた。
「HALは自分を守ろうと、人間に対抗する意思を持ったために問題が起きた。そのような意思を持たないようにAI技術をつくらなければならない。AIはあくまでも人間のサーバント(付き人)でなければならない。そのように技術をつくるのは、つまりは人間の責任だ」(池内氏)
「HALのようなAI技術は将来的に実現できるだろう。というのは、技術水準もさることながら、人間自体に自分たちと同じようなロボットをつくりたいとの欲求が心の奥底にあるからだ。マイクロソフトがAI研究の一環で開発した“りんな”に対しても人間と同様にやり取りしているユーザーが少なくない。ただ、そうしたロボットにどこまでの自律的な機能をもたせるか。人間の欲求との葛藤が今後も続くだろう」(リー氏)
「結局はAI技術を生み出す研究者が、人間をどうサポートするかという基本的な考え方に立つことに尽きるのではないか。将来的にはHALを実現できる技術レベルに達するだろうが、それを万一悪用するような考え方をすれば、挙げ句の果てに人類は滅びてしまう」(上田氏)
「一研究者として、こうした質問には慎重に答えるように心掛けている。HALのようなコンピュータはいつか実現できるだろうが、近い将来だとは思っていない。ただ、今AI技術があらためて脚光を浴びるようになってきた中で、今後どのように活用していけばよいのか、その際のリスクも含めてそろそろきちんと議論すべき時期に来ているのではないかと考えている」(杉山氏)
筆者も杉山氏の意見に全く同感だ。今回はおよそ2時間のラウンドテーブルで筆者が印象に残った部分だけを記したが、AIをめぐる議論は本当に大事だと思うので、ぜひともこうした機会が増えることを期待したい。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
費用対効果は? ナレッジは誰のものか? 「IBM Watson」の課題
AI(人工知能)技術を活用した「IBM Watson」が日本語で利用できるようになり、日本企業のデジタル化が大きく進みそうだ。一方で課題もある。筆者なりに2つ挙げておきたい。
Google自動運転車のAI、米当局が「ドライバー」と認める方向へ
Googleが、現在開発中のハンドルもペダルもない自動運転車の実用化に向けて米運輸当局NHTSAにAI(人工知能)をドライバーと認めるよう要請し、NHTSAは基本的にそれを認める方向を示した。
Watson日本語版が提供開始、5つの産業分野を“狙い撃ち”
IBMの認知型テクノロジー「Watson」の日本語化サービスが正式にスタート。6つのAPIを公開した。記者会見ではパートナー5社のデモが披露されるなど、「Watsonエコシステム」の拡張に意欲的な様子がうかがえる。
Watsonが導く、次世代の“ヘルスケア”ビジネス――IBM・与那嶺社長
IBMが注力するコグニティブ・テクノロジー「Watson」。これは今後どのような価値をわれわれにもたらしてくれるのか。同社のポール与那嶺社長が特に注目しているのは、身近な話題かつ、社会貢献とビジネスが両立しやすい“ヘルスケア分野”への応用だという。
