「パブリック」と「プライベート」を“いいとこ取り”したクラウド戦略の行方:Weekly Memo(2/2 ページ)
NTTコミュニケーションズが企業向けクラウドサービスを大幅に機能強化した。狙いは「パブリック」と「プライベート」の両サービスの“いいとこ取り”にある。ただ課題もありそうだ。
聞けなかったパートナーエコシステムへの力の入れよう
今回のEnterprise Cloudの機能強化における最大のポイントを挙げるならば、「ホステッドプライベートクラウドサービスの拡充」である。
それは、「機能強化されたEnterprise Cloudによるホステッドプライベートクラウドサービスは、私どものこれまでの経験と実績を踏まえて、他の競合サービスと比べても、最もユーザーニーズに即した構成になっていると確信している」との栗原氏の発言からも明らかだ。さらに同氏は、「お客様に最も最適な“プライベートクラウド・アズ・ア・サービス”を提供したい」とも強調した。
こう聞くと、NTT Comはこれまで展開してきたAmazon Web Services(AWS)やMicrosoft Azureなどとのパブリッククラウドサービス市場での戦いを避けたようにも受け取れるが、実はAWSやAzureも企業向けにはVPN(仮想プライベートネットワーク)などで個別に対応しているケースが多く、実質的にはホステッドプライベートクラウドサービスを展開している。つまり、今後の企業向けサービスはホステッドプライベートクラウドが主戦場になると見ていい。今回のNTT Comの発表はそれを見越したものといえる。
さらにNTT Comのサービスには、AWSやAzureにはない通信事業者ならではの世界26カ国・地域に展開するIPネットワーク網をはじめとしたネットワーク機能におけるアドバンテージがある。そう考えると、グローバルの企業向けクラウドサービス市場において、NTT ComのEnterprise Cloudが今後AWSやAzureと互角に渡り合う日が来るかもしれない。
ただ、今回のNTT Comの会見を聞いていて気になる点もあった。クラウドサービス事業を展開するうえで重要なポイントとなるパートナーエコシステムに関する話が全くなかったことだ。もちろん、同社はクラウド事業において「パートナーソリューションプログラム」を展開しており、120社を超えるパートナー企業が参加するエコシステムを形成している。ただ、今回の会見ではその点への言及はなかった。
あくまでサービスの機能強化に関する発表ということかもしれないが、例えばAWSやマイクロソフトがクラウドサービスに関する発表を行う際には、必ずパートナーエコシステムに関する話が張り合うように出てくる。その意味で今回のNTT Comの会見には少々“温度差”を感じた。ぜひ同社にはあらためてパートナーエコシステムへの力の入れようも語ってもらいたい。
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