草食系情シスが、肉食系マーケと上手くやるには アビームの本間さんに聞いてみた:情シス“ニュータイプ“の時代(2/2 ページ)
情シス不要論が叫ばれる中、業務現場と接点を持ち、一緒にシステム導入を考えていこうというニュータイプの情シスが増えているという。こうした情シスたちを、現場はどう見ており、どんな期待を抱いているのか。
「僕が最近気になるのは、業務部門の人が仕事が終わるとPCをたたんで帰ることなんですよ。機械は24時間働かせたって構わないわけだから、夜のうちに競合サイトを巡って画面キャプチャーを撮るようにしておけば、翌朝、人がそういう作業をしなくて済むでしょう? そういうこととか、Excelのちょっとした便利な機能とか、IT部門の人が少し教えれば業務部門の仕事はものすごくはかどるはずなんです。そしてありがたられますよ。人間、ちょっとできるようになるとプロのすごみが分かるようになるからね」
「情シス部門の人は、ユーザー部門のコンピューティング能力を上げる伝道師になるべきだ」と本間さん。それは「ビッグデータ解析」のような、より戦略に関わるようなテーマでも同様で、本気で取り組むマーケッターほど、情シスの支援が必要になるという。
「マーケティング部門の人が自分たちでBIツールを導入して満足するアウトプットが出るなら、それでもいい。だけど、本当にデータ活用の意味が分かってるマーケティング部門の人たちは、そんなやり方はしませんよ。手元のデータを入れれば、データは可視化されますが、そのままでは精度も低いし、意味のある発見はない。BIツールを本気で使おうと思うと、“どこからどのデータを持ってきて、どう整形するか”という前処理が圧倒的に大事なんです。そういうことは情シス部門じゃないとできませんよね」
本間さんいわく、日米の企業を比べた時、IT部門と経営トップとの距離感には、かなり差があるという。米国では社内のあらゆる情報を握っているのがIT部門で、CIOは“社長の一番のアドバイザー”という位置付けである。
一方、日本の場合、IT部門は情報処理部隊という性格が強く、これまで経営の意思決定にはあまり関与してこなかった。だが、日本の情シスも本来はもっと経営に近い立場であるべきではないか、というのが本間さんの考えだ。
「夢を追いたいなら、多少の責任は負わないとね」(本間氏)
企業における情シスの立ち位置を変えたいなら、利益を産む部門として事業責任を追う覚悟が必要になるということだ。
相手の領域に踏み込みすぎず、情シスとしての価値を出す
同質的な社会を背景に、これまでの日本企業はマスマーケティングで成功してきた。しかし今、多様化するニーズに応えるためにはそのやり方を変え、もっとデータを上手に活用していかなければならない。そのときに、情シスは不要どころか“大いに必要になる”というのが本間さんの見立てだ。
「そろそろマーケティングとITがスムーズに話ができるようにならないと、進まないですよね。でも、それがなかなか難しい。マーケティング部門ってジャイアンみたいな人たちばかりなので、『とにかく俺の言う通りやってくれればいいから!』と、のび太君的な情シスを支配しようとするわけです。あるいは『情シスはマーケティングのこと知らないから頼めない』と、排除するか。でも、情シスがマーケの仕事を分かるんだったらマーケはいらないわけです。マーケはITのことが分からないから頼むわけで、もっと自分たちの仕事について、きちんと情シスに説明しなければいけないはずなんですけどね」
情シスの方も、ユーザー部門がITを使って何をしたいのかを理解する必要がある。しかし、最近の情シスの努力の方向には若干疑問がある――と本間さんは見ている。
「情シス部門の人がUIとかUXについてのアドバイスを求めてきたりするのって、なんで? と思います。そんなことよりもやるべきなのは、今の時代に情報システムの運用方法や人材育成がどうあるべきか、を考えることだと思うんです。他の会社はどうしているのか外に出て情報交換したり、海外のイケてるIT部門は何をやっているのか研究したり、もっとすればいいと思いますよ」
一つの部門が全てを担おうとするのではなく、それぞれの部門が専門性を磨き、それを持ち寄ることで新たな価値を作っていく――それこそが情シスとユーザー部門のあるべき関係だと本間さん。当たり前のようでいて、「情シス不要論」に踊らされていると見落としがちな話かもしれない。
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