情シスよ、組織の壁を越えよ 「企業のデジタル化」の実態と課題:Weekly Memo(2/2 ページ)
このところ「企業のデジタル化」が話題に上ることが増えてきた。果たしてその実態はどうなのか。課題は何か。野村総合研究所の最新調査を基に考察してみたい。
最後に、デジタル化を推進する11の施策について、優先度を「高い」から「低い」まで5段階で聞いた質問では、「全社的な活用方針・活用戦略の策定」および「情報システム部門と事業部門とのコミュニケーションや協業の促進」がともに平均4.0で最上位となった(図4)。
この結果を踏まえてNRIは、「日本では企業がデジタル化するうえで新技術やデータ分析などのスキルを持つ人材の確保が急務と言われてきたが、今回の調査結果からは、全社的な方針決定や組織間の協調、さらに現場ごとに作られたデータをいかに統合するかなど、“組織の壁”を越えるための施策の優先度が高いことが明らかになった」と説明。
そのうえで「これまでIT活用の主要な目的だったオフィス業務の効率化や、個々の事業部門のマーケティングに閉じたデジタル化ではなく、企業全体で戦略的にデジタル化を進めるうえで“組織の壁を越える施策”を積極的に推進していくことが求められる」との見解を示した。
この見解には筆者も同感だ。加えて問題意識として1つ述べておきたいのは、企業のデジタル化に向けてCIOおよび情報システム部門がどのような役割を果たすべきかである。その意味では、前述の調査結果で「全社的な活用方針・活用戦略の策定」とともに「情報システム部門と事業部門とのコミュニケーションや協業の促進」の優先度が最も高かったのは注目すべき点だ。
では、情報システム部門と事業部門とのコミュニケーションや協業を促進するためにはどうすればよいのか。まずはNRIの定義にあるようなデジタル化に向けた情報システム部門の意識改革が不可欠だ。とくに同部門のリーダーであり経営幹部でもあるCIOがデジタル化の本質を理解してどれだけ柔軟に立ち回れるかが大きなカギを握るだろう。さらにCEO(最高経営責任者)がそのCIOを全面的に信頼し、後ろ盾になるべきである。
とはいえ、デジタル化を押し進めるのは、それぞれにニーズがある各事業部門だ。そうした各事業部門の活動に対して情報システム部門に求められるのは、インフラやデータ活用、部門間連携、人材といった面で支援することだ。そして企業組織としてそう機能するように作り上げていくのが、他でもないCEOでありCIOの役割である。それこそが「組織の壁を越える施策」として最も効果的なのではないだろうか。
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