PCの使い方が分からない(?)新人にマナーをうまく伝える知恵:ハギーのデジタル道しるべ(2/2 ページ)
システムエンジニア教育や情報セキュリティ教育、コンプライアンス教育、内部不正対策など40年近く手掛けてきた経験からいえる、いまの新人にITリテラシーやマナーを知ってもえるためのヒントとは?
「知らない」がスタート地点
中年の想像を絶するほどに、子供の学習能力はすごい。小学校の入学式時点で、既に両親(両親自体も若いが)よりもスマホに詳しく、操作方法も当然ながら、時には論理的にも詳しくてびっくりする。だが、子供は子供だ。それは100年前も、200年前も人間の本質としては変らない。だから全く学習していないジャンルについては、極めて非常識な行動を平気でしてしまう。その一例がバカッターである。
だから、その責任の半分は両親にあるだろう。理由は簡単で学習していないからだ。子供は物事の変化だけを捉えて行動してしまうから、「面白い」「回りが驚く」という理由だけで動き、その結果として「被害者」を生んでしまうという想像力が欠けてしまう。
この度合は明らかに昔の方が優れていた。近所に本気で怒り、げんこつをするうるさいオヤジやオバサンがいたものだ。それが今では消滅し、親自体が世間知らずなため、子供がデパートで騒いでも注意しないし、老人にぶつかれば子供より老人が寝たきりや命に関わるという事態になることも想像できない。それどころか子供への注意に対して、それをした人に対して警察や店員に苦情をいうという信じられないモンスターぶりを発揮する親もいる。よって他人は関わりを恐れて注意できない。そこから、「何をしてもいい」という感性を持つ子供が育ってしまう。
数年前に、あるそば屋で製麺機の中に体を突っ込んだ画像をアップするバカッターがいた。そば屋はその後、風評被害で倒産した。奥さんは、主人が自殺してからがんばって営業を続けてやっと単年度黒字化を果たしたばかりだったという。ところがその後、損害賠償を請求したらバカッターの両親が裁判で全面的に争う姿勢を示したという。もはや、ここには心も善意も品性もない。バカッター個人は多分マスコミ受けの謝罪はしても、それは本意ではないだろう。親がそれを許してしまっているからだ。
こういう世の中で画一的な新人教育は困難を極める。それでも新人教育担当者は、「わが社に入社したからには戦力となるスキル、できれば社会人としての常識は身に付けて仕事にまい進させたい」と考える。企業の環境や立ち位置、新人の潜在能力や資質、度量などが皆違うので、担当者のその希望を達成させる100点満点の解答はないが、ヒントをいくつかお伝えしたい。
その1
長く続いた「PCの王座は既に終えんを迎えている」という事実をまず理解する。今でもとても重要だが、それ以上の様々なデバイスが存在している。中年の方々の多くはまだ事実を意識していない。世代格差を埋めるには、中年の方々が「現実」を直視し、知ることから始めるべきだと思う。
その2
若者に迎合する必要はない。でも、「敵を知り、己を知れば、百戦危うからず」の言葉どおり、まず「知る」こと、そして「理解する」ことは努力すべきだ。スマホでFacebook、Twitter、LINEなどには自ら参加すべきだろう。取りあえず触ってみることくらいは行っておくべきだ。若者の視点に立つことは極めて重要になる。
その3
中年の意地を見せてほしい。若者が熟知しているのは、その大部分がスマホの操作方法と若干の裏技に過ぎない。スマホという存在を論理的に理解することや、Facebookの仕組み、社会常識として「してはいけない事」などの多くは中年の方が長けている。中年が若者より1つでも多く得意な点を持てれば、彼らに常識やマナーを伝えていけるはずだ。
次回は実際に筆者が企業研修などの場で行ってきた内容を中心に、具体例を織り交ぜて「新人にどう教えるべきか」の回答まではいかないまでもそのヒントを紹介したいと思う。
萩原栄幸
日本セキュリティ・マネジメント学会常任理事、「先端技術・情報犯罪とセキュリティ研究会」主査。社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会技術顧問、CFE 公認不正検査士。旧通産省の情報処理技術者試験の最難関である「特種」に最年少(当時)で合格。2008年6月まで三菱東京UFJ銀行に勤務、実験室「テクノ巣」の責任者を務める。
組織内部犯罪やネット犯罪、コンプライアンス、情報セキュリティ、クラウド、スマホ、BYODなどをテーマに講演、執筆、コンサルティングと幅広く活躍中。「個人情報はこうして盗まれる」(KK ベストセラーズ)や「デジタル・フォレンジック辞典」(日科技連出版)など著書多数。
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