IT改革に成功する企業のCIOはどこが違うのか:Weekly Memo(2/2 ページ)
「企業のデジタル化」が注目される中、世界と日本ではその取り組み状況やCIOとCEOの関係に違いがあるのか。ガートナーの最新調査を基に考察してみたい。
CEOはCIOを参謀としてデジタル化に突き進むべし
そして、松原氏の冒頭のコメントにあるCIOとCEOの関係は、世界と日本でどう違うのか。同氏は「企業のデジタル化を成功させるためには、CIOとCEOの関係が重要になる。つまり、テクノロジーを踏まえたCIOの提言がCEOに受け入れられることが重要」と前置き、両者の関係性についてガートナー独自の分析手法に基づいて、世界と日本の違いを図2のように示した。
ガートナー独自の分析手法では、両者の関係を「危機的関係」「取引関係」「提携関係」「同盟関係」の4つに分類。意味合いとしては記載した順に関係性が密になり、それに伴ってCIOのCEOに対する影響力も増していく形だ。
図2によると、日本企業では同盟関係と提携関係の割合が世界の平均に比べて低く、取引関係の割合がその分高くなっている。こうした分析を踏まえて松原氏が語ったのが、冒頭のコメントである。
また、ガートナージャパンの長谷島眞時エグゼクティブプログラム グループバイスプレジデント兼エグゼクティブパートナーは、今回のCIOサーベイを受けて次のように語っている。
「既存のビジネスに破壊的な影響を与えるデジタル化が想像を超えるスピードで押し寄せてくる中で、CIOやIT部門はそれをどうプロアクティブに支援していくのかを検討すべきだ。一方で日本のCIOやIT部門は、従来の課題に大半の時間と工数を割かざるを得ないのが実情であり、この期待と現実のギャップをどう埋めていくかが重要な課題になる。現在行っていることがデジタル化の布石になるよう、将来を見据えたIT戦略を構築して推進することが、今まさに求められている」
最後に、CIOとCEOの関係について筆者の見解も記しておきたい。
両者の関係性についてこれまで取材を重ねてきて強く感じているのは、「ITをうまく活用している企業は、CIOが経営やビジネスへITを役立たせるために、CEOと頻繁に話をしている」ということだ。一方で、「CEOが経営やビジネスへのIT効果を理解し、最大限活用しようと、CIOにどんどん相談し意見を聞いている」というCEO像も印象強い。
分かりやすく言えば、「できるCIOには、できるCEOがいる」、その逆も成り立つ。まさしくガートナーが言うところの「同盟関係」である。これはデジタル化に向けても同じだろう。
ただ、高い提携関係から同盟関係を築いていくのは、そうしたスキルを持つCIOを任命することも含めて、やはりCEOの役目だ。CEOはCIOを参謀としてデジタル化に突き進むべし。とはいえ、両者ともデジタル化の意味を的確に捉えていることが大前提であることを申し添えておきたい。
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