日立製作所は4月13日、国立病院機構の「国立病院機構診療情報集積基盤」」(NCDA)のデータ集積基盤を構築したと発表した。
NCDAは、国立病院機構が全国で運営する143の病院の電子カルテシステムなどが持つ診療情報を一元的に収集・蓄積する基盤。国立病院機構は膨大かつ複雑な診療情報を効率的に分析・可視化することで、医療の質の向上や病院の経営効率改善に役立たせたい考え。
国立病院機構では電子カルテなどの形式で蓄積された診療情報を分析しているが、病院ごとにさまざまな種類の電子カルテシステムがあり、データの互換性の問題などから、データを統合的に分析することは困難だった。また、全ての病院に同種の電子カルテシステムを導入するには、運用面やコスト面で課題があった。
日立が構築したデータ集積基盤は、さまざまな種類の電子カルテシステムに蓄積された診療情報を一元的に収集・蓄積できる。国立病院機構が運営する各病院で個別に作成された電子カルテのデータを診療情報の標準的な仕様であるSS-MIX2形式で収集し、別途蓄積されたDPCデータやレセプトデータも統合してデータベース化する。
DPCデータは、急性期の入院医療を対象として、患者の入退院日、傷病名、治療方法などの診療実績を記録したデータ。レセプトデータは、医療機関を受診した際に発行される診療内容や請求額などが記載されている診療報酬明細書を電子化したものとなる。
このデータ集積基盤を活用することで、各病院で使用する電子カルテシステムを変更することなく、膨大かつ複雑な医療情報を安全かつ効率的に分析、可視化できる。NCDAは患者の重要な個人情報を取り扱うため、堅牢なセキュリティ対策を行った上で運用されるとしている。
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