ビッグデータとプライバシーの共存、EUの取り組みは?:ビッグデータ利活用と問題解決のいま(1/3 ページ)
改正個人情報保護法の本格施行を控えた日本でも話題となったEUの個人データ保護問題。ビッグデータのイノベーションにどんな影響をもたらしているのだろうか。
急展開するEU個人データ保護規則制定に向けた動き
本連載の第25回および第30回、第31回で、EUデータ保護規則提案の動向や、EUから米国への個人データ移転に関するセーフハーバー協定の無効問題を取り上げてきた。
その後、EUデータ保護規則提案に関しては2015年12月15日、欧州議会と閣僚理事会、欧州委員会が正式に合意したことを発表した)。EUデータ保護規則提案の主要項目および概要は以下の通りである。
同提案は2016年内に採択される見込みであり、提案採択から2年後の2018年には、EUデータ保護規則が各国で適用される予定だ。EU域内に拠点を有する企業だけでなく、域外から加盟国の市民に製品・サービスを提供する企業にもその影響は及ぶことになる。
EUと米国間プライバシーシールドで注目されるFTCの動向
他方でセーフハーバー協定問題に関して、2016年2月2日にEUと米国は、下記の3要素を柱とする、新たな「EU-米国間プライバシーシールド」のフレームワークを制定することで合意した。
同月29日に欧州委員会は、EU-米国間プライバシーシールドに組み込まれる法律文書を公表している。ここで、EU当局以上に今後の動向が注目されるのは、本連載第22回などで取り上げた米連邦取引委員会(FTC)だ。
FTCは2015年3月、プライバシー、データセキュリティ、スマートホーム、ビッグデータ、IoTなど次世代の消費者保護を目的とした技術研究・調査室(OTRI)を設置し、業種・業界の枠を越えた政策を展開している。個人データ保護をめぐるEU-米国間のハーモナイゼーションは、欧米それぞれの市場で事業を展開する日本企業にも影響が及ぶので、注意が必要だ。
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