NTT Comはクラウド市場で“ITジャイアント”に勝てるのか:Weekly Memo(1/2 ページ)
「“ITジャイアント”といわれるグローバルベンダーと、クラウド事業でしっかりと渡り合っていけるようにしたい」――。そう語ったNTT Comの庄司社長は、強豪ひしめくクラウド市場でどう戦おうとしているのか。
クラウドへの注力を鮮明に打ち出した新中期事業戦略
「“ITジャイアント”といわれるグローバルベンダーと、クラウド事業でしっかりと渡り合っていけるようにしたい」――。NTTコミュニケーションズ(NTT Com)の庄司哲也社長は、同社が先頃開いた新中期事業戦略の発表会見でこう語り、クラウド事業のグローバル展開に強い意欲を示した。
庄司氏が2016年度から2020年度までのNTT Comの新中期事業戦略「ビジョン2020」の目標として掲げたのは、2015年度見込みで1兆3200億円の売上高を2020年度で1兆5000億円に伸ばすとともに、そのうち海外事業を3500億円から6000億円へと売上高比率で27%から40%に引き上げることだ。つまり、海外事業の拡大を成長の原動力とする戦略である。
ビジョン2020のアクションプランとして、同社が提供するソリューションによるICT環境の最適化を通じて顧客企業のデジタルトランスフォーメーションに貢献するという「グローバルクラウドビジョン」を毎年設定するとし、まず、その2016版では、Software Defined(SD)技術のさらなる活用やマネージドサービスにおける管理・自動化機能の高度化に重点を置く姿勢を明らかにした。
NTT Comといえば、グローバルで容量7.6Tbpsの通信ケーブルを運用するメガキャリアとして知られる。最近では、そのグローバルなネットワークインフラを生かしてクラウド事業にも注力しており、新たな事業の柱に育てようとしている。今回策定した新中期事業戦略でも、そうした姿勢が如実に表れている。
庄司氏によると、クラウド事業を支えるデータセンターのサーバルームの面積は現在、グローバルで合計36万7000平方メートルで、そのうち海外が24万平方メートルと日本の2倍以上になっている。
こうしたグローバルに展開するデータセンターを使って提供しているクラウドサービスが「Enterprise Cloud」である。SDN(Software Defined Network)を活用した専有型および共有型クラウドと豊富なAPIにより、基幹システムからクラウドネイティブなアプリケーションまで対応できるのが特長としている(図1参照)。
このEnterprise Cloudについては、2016年3月7日掲載の本コラム「パブリックとプライベートを“いいとこ取り”したクラウド戦略の行方」で解説しているので参照いただきたい。
クラウド事業者や総合IT企業にないNTT Comの強みとは
Enterprise Cloudのグローバル展開については、現在11カ国14拠点で利用可能だが、2016度に12カ国15拠点とし、引き続き拡充していく考えだ(図2参照)。
また、世界8つの都市エリアにおいて、同一エリア内の複数データセンターをあたかも1つのデータセンターとして利用できる「都市エリアのデータセンター間ネットワーク」や、都市エリアや国をまたぐ世界30カ所以上のデータセンターを大容量の閉域ネットワークで接続できる「遠隔データセンター間ネットワーク」なども、NTT Comならではのクラウド関連サービスといえよう。
関連記事
- 「Weekly Memo」記事一覧
- 「パブリック」と「プライベート」を“いいとこ取り”したクラウド戦略の行方
NTTコミュニケーションズが企業向けクラウドサービスを大幅に機能強化した。狙いは「パブリック」と「プライベート」の両サービスの“いいとこ取り”にある。ただ課題もありそうだ。 - AWSのパートナーアライアンスが与えるインパクト
クラウドサービスで躍進を続けるAWSが、日本市場でパートナーアライアンスの拡大に乗り出した。ビジネスの拡大に向けた動きだが、市場競争の激化も背景にありそうだ。 - 2016年のクラウド市場はどうなるのか
2016年のIT業界はIoT(Internet of Things)やAI(人工知能)など昨年来のホットな話題を中心に幕を開けたが、筆者は引き続きクラウド利用の進展と課題にも注目したい。 - マイクロソフトが“ハイブリッドクラウド”に本腰を入れる理由
マイクロソフトがクラウド事業でハイブリッド利用ニーズに向けた新たな戦略を展開し始めた。狙いは何か。その背景にはどんな動きや思惑があるのか。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.