減収減益のNEC、次の3年はどう動く?:16年3月期通期決算(1/2 ページ)
NECが2016年3月期通期の連結決算を発表。官公庁や公共向けおよび、通信事業者向け事業が不調で減収減益となった。同日発表した新たな中期経営計画では、3つの事業領域に注力し、ビジネスの成長エンジンを海外に求める姿勢を示している。
NECは4月28日、2016年3月期通期の連結決算および新中期経営計画を発表した。流通・サービス業や製造業などを中心とするエンタープライズ事業が好調だった一方で、官公庁向けと通信事業者向け事業および、エネルギー関連事業が不振だったことから売上高、営業利益ともに減少。減収減益となった。
連結売上高は前年同期比3.9%減で2兆8212億円。営業利益は前期比16.2%減の1073億円、経常利益は827億円(前期比26.2%増)、当期純利益は687億円(前期比20%増)。子会社解散などに伴う税金費用などが減少し、純利益については中期経営計画を上回ったことから、年間配当は前期よりも2円増の6円となった。
同社は2016年度から国際財務報告基準(IFRS)を任意適用する。2017年3月期の業績予想は、連結売上高が前期比2%増の2兆8800億円(IFRS算出の2015年度売上高は2兆8248億円)、営業利益は同9.4%増の1000億円(IFRS算出の2015年度営業利益は914億円)。セキュリティ関連事業、グローバルキャリア向けネットワーク事業、リテール向けITサービス事業に注力し、増収増益を目指す。
案件減や不採算案件で減収減益、来期は10%弱の増益目指す
売上が落ち込んだパブリック部門は前期比6.7%減の7668億円(営業利益は前期比23.1%減の575億円)。前期に官公向けの大型案件があった反動と不採算案件の増加が響いた。来期は官公向け事業が増加するものの、公共向けは減少すると予想。減収を予想するが、不採算案件の減少や原価低減を推進し、増益を目指すという。
通信事業などを中心にしたテレコムキャリア部門は、海外で海洋システムや通信運用管理ソリューション(TOMS)の売上が増加した一方で、国内キャリアの投資が減少していることから売上は前期比5.6%減の6989億円(営業利益は26.5%減の456億円)となった。
このほか、スマートエネルギー事業において、140億円の赤字(営業損益)となったのも大きい。「電気自動車や蓄電システムの市場があまり伸びなかったこと、そして厳しい価格競争に巻き込まれてしまったことが影響した」(NEC取締役 執行役員常務 兼 CFO 川島勇氏)という。2016年度はSIやサービス事業へシフトしつつ、事業規模を最適化することで、損益を改善していくとしている。
セグメント別で唯一、増収増益となったエンタープライズ部門は、製造業向けなどに大型案件が入ったことから、売上は前期比11.2%増の3007億円に(営業利益は167.5%減の222億円)。来期も堅調に推移するとみているが、IoTプラットフォームの開発に数十億規模で投資するため、減益となる見込みという。
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