この8年、クラウドでIT業界はどう変わったのか:Weekly Memo(2/2 ページ)
本連載も今回で400回目。連載開始から8年の間にIT業界はどう変わったのか。これまでの記事を通して振り返ってみたい。
SIerはサービスインテグレーターへの転換を急げ
クラウド時代のシステムインテグレーター(SIer)のありようについては、まだまだ課題がありそうだ。「クラウド時代のシステムインテグレーターの役割」(2010年2月22日掲載)では、複数のSIer幹部の話をもとに「クラウドサービスはこれまでオンプレミスのシステム構築をなりわいにしてきたSIerに抜本的な業態転換を迫っている。それは一言でいうならば、SIの“S”をシステムからサービスへ変えた“サービスインテグレーション”への転換だ」と記した。
ところが、「2016年のIT市場はどうなるか」(2015年12月21日掲載)で筆者は、「SIerはデジタルトランスフォーメーションの波に乗り遅れてはならない。国内IT市場は今、大型のSI案件がめじろ押しの状態だ。ただ、そうした案件の多くは、デジタルトランスフォーメーションとは関連性があまりない。従って、案件に携わっている多くのエンジニアが最新技術に乗り遅れかねない。これがひいては日本のSIerのグローバルでの競争力の低下につながらないか、危惧されるところだ」――と警鐘を鳴らした。サービスインテグレーションがデジタルトランスフォーメーションにつながると考えれば、SIerは早急の対応が必要だろう。
クラウド市場で今、最も注目を集めているホステッドプライベートクラウドサービスについては、「注目度高まる“持たないプライベートクラウド”」(2013年9月24日掲載)で初めて詳しく解説した。
「パブリッククラウドとプライベートクラウド双方の特長を併せ持つサービスへの顧客ニーズが最近、急速に高まってきている」(富士通幹部)として、この頃からNEC、富士通、インターネットイニシアティブ(2014年7月14日掲載「IIJとマイクロソフトの協業が映し出すクラウドの主戦場」、NTTコミュニケーションズ(2016年3月7日掲載「パブリックとプライベートを“いいとこ取り”したクラウド戦略の行方」などが注力し、サービス拡充を図っている。
この分野については、パブリッッククラウドサービスで先行するAmazon Web Services(AWS)やMicrosoft Azureも企業向けに対応した同様のサービスを展開しており、まさしくクラウド市場の主戦場になる可能性が高い。国産勢が存在感を発揮できるかどうか、注目されるところだ。
最後に、今回あらためて400本の記事を読み返してみて、結びのメッセージを記しておきたい。「ITビジネスに求められる発想の転換」(2011年2月28日掲載)で紹介した、米IBMのサミュエル・パルミサーノCEO(当時)が激動の時代に向けて語った言葉である。
「勝者は嵐を生き延びた者ではなく、ゲームのルールを変えた者だ」
ゲームのルールを変えるとはどういうことか。その発想の転換が、これからのITビジネスに求められているように思えてならないのは筆者だけではないだろう。ぜひ、読者の皆さんも考えてみていただきたい。
関連記事
- 「Weekly Memo」記事一覧
- 第4のパラダイムシフトの起点――Salesforce for Google Apps
今回は、GoogleとSalesforce.comが4月14日に発表した新サービス「Salesforce for Google Apps」に見たITシステムの利用形態の変化について考えてみたい。SaaSの活用は企業システムでは限定的ととらえられがちだが、着実にその範囲は広がりつつある。それはクラウドコンピューティングへのパラダイムシフトを意味する。 - 新たな合従連衡を生むクラウドコンピューティング
HP、Intel、Yahoo!が7月29日、クラウドコンピューティングに関する共同プロジェクトを発表した。IT分野の新たなパラダイムに向けた合従連衡の動きが本格化しそうだ。 - 「SAP、Oracle、Microsoftはもう古い」―― Salesforce.comベニオフCEOの講演語録
Salesforce.comのマーク・ベニオフCEOが先週、自社イベントで基調講演し、同社のクラウドビジネスについて語った。その発言から印象深かった言葉をピックアップしてみた。 - ソフトウェアのベンダー別ランキングが映し出すもの
Gartnerが先週発表した2013年の世界ソフトウェア市場におけるベンダー別売上高ランキングは、企業向けITビジネスにおける各社の勢いを映し出したものともいえそうだ。 - Salesforce.comが狙う「世界第4位」とその先
Salesforce.comが躍進を続けている。その強さの秘密はどこにあるのか。先週、同社の日本法人が開いたプライベートイベントを取材して探ってみた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.