第14回 ランサムウェアでデータが人質になるってどういうこと?:クラウド社会とデータ永久保存時代の歩き方(3/3 ページ)
国内ではランサムウェアによる被害が増えています。この脅威について“不正プログラム”という視点からではなく、人質にされてしまう“データ”の視点で考えてみると、どのような対策があるのでしょうか。
最強のバックアップとは?
今まで解説してきましたように、最強のデータバックアップはオフラインバックアップです。ストレージの世界ではリムーバブルメディアとして使われているもので、磁気テープや光ディスクなどがあります。特に1カートリッジあたり6テラバイト以上と、大容量で低コストの磁気テープは多くのデータセンターでも利用されています。
一方、その使い勝手とリカバリの速さで浸透してきたディスクバックアップもいくつか種類があります。従来のテープ装置をエミュレーションした仮想テープ装置(VTL:Virtual Tape Library)や、ファイルベースのバックアップ装置があります。仮想テープ装置はアプリケーション側からはリムーバブルメディアとして見えるため、データへのアクセスはファイルシステムと比較して複雑と言えます。
さらに言えば、バックアップソフトウェアや装置もマイナーなものを選ぶという考え方もあります。北米の政府関係者は、iPhoneやAndroidといったメジャーなスマートフォンではなく、比較的シェアの低いものを独自仕様で使っているそうです。あまりにもメジャーなものは、攻撃者がその中身を1つ解析すれば、多くのデータにアクセスできる可能性が高い(つまり投資対効果が高い)ため、攻撃対象となる可能性が高いと考えられます。
とはいえ、全部のデータをレプリケーションした上にテープへバックアップしていたのでは、いくら予算があっても足りませんよね? 次回はデータをうまく守っていくためのポイントを紹介したいと思います。
著者:井上陽治(いのうえ・ようじ)
日本ヒューレット・パッカード株式会社 ストレージテクノロジーエバンジェリスト。ストレージ技術の最先端を研究、開発を推進。IT業界でハード設計10年、HPでテープストレージスペシャリストを15年経験したのち、現在SDS(Software Defined Storage)スペシャリスト。次世代ストレージ基盤、特にSDSや大容量アーカイブの提案を行う。テープストレージ、LTFS 関連技術に精通し、JEITAのテープストレージ専門委員会副会長を務める。大容量データの長期保管が必要な放送 映像業界、学術研究分野の知識も豊富に有する。
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