巨人AWSが説く、クラウド移行で重要な2つのポイント:Weekly Memo(2/2 ページ)
クラウドと言うと、つい技術寄りの話になりがちだが、AWSが「経営視点」で企業ITのクラウド化について説く機会があったので、その内容を取り上げたい。
クラウド移行に向けて企業が進むべき4つのステップ
では、具体的に既存のITをどのようにクラウドへ移行していけばよいのか。ケルマン氏は多くのAWSユーザーの経験に基づいて、図3に示したように4つのステップがあるという。
まず第1ステップが「プロジェクト化して進める」ことだ。ここでのポイントは、大掛かりな移行計画ではなく、クラウドへ移行(クラウドサービスを適用)できそうな業務から小さなプロジェクトを組んでスピーディーに進めることにある。そして1つずつ移行を成功させていけば、それが全体へとつながる大きな流れになっていくとしている。
第2ステップは「基盤作り」である。この段階で今後のクラウドへの移行を見据えたグランドデザインを描くということだが、同氏によるとポイントは2つあるという。まず1つは、IT基盤としてオンプレミスとの統合を見据えたハイブリッドな仕組み作りを心掛けることだ。「ハイブリッド」を強調するあたり、AWSも柔軟な対応が板についてきた感じがする。そしてもう1つは、前述したクラウドCoEの組織作りとこの組織が十分に能力を発揮できる環境作りだ。
このクラウドCoEが十分に機能するようになれば、第3ステップの「移行」、第4ステップの「最適化」へと進めることができるようになるという。同氏によると、移行へのステップにおける注意点は、作業そのものを段取り良く行うこともさることながら、各現場へのサポートが成功を左右するという。その意味でもクラウドCoEの果たすべき役割は大きい。
また、最適化において重要なのは、コストやパフォーマンスにおける明確な指標を立てることだ。こうして見ると、クラウド化への4つステップは、まさしくPDCAサイクルの連続ともいえそうだ。
同氏によると、AWSはこうしたクラウドへの移行に向けて、先に紹介した図1の内容に対して図4のようなソリューションを用意しており、「どの領域からでもクラウド移行プロジェクトをスタートできる」ようにしているという。
そして、同氏は最後に次の2つの点を強調した。1つは「クラウドへの移行に向けた経営層の強いリーダーシップ」。躍進するAWSユーザーの多くにこの点があてはまるという。もう1つは「プロジェクト推進においてトライ&エラーを恐れないこと」。AWS自体にもこの文化が根付いているという。「つまり、リスクをとる覚悟がなければイノベーションは生まれない」という言葉が非常に印象に残った取材だった。
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