日本企業はなぜ、“攻めのIT”に及び腰なのか:Weekly Memo(2/2 ページ)
企業におけるデジタルトランスフォーメーションの推進には、最高経営責任者(CEO)のリーダーシップが不可欠だ。果たして日本のCEOはその心構えと覚悟ができているか。世界のCEOを対象に行われた最新の民間調査結果をもとに考察したい。
世界のCEOが挙げた今後3年間の戦略的優先事項とは
では、CEOが今後3年間の戦略的優先事項として挙げたのはどのような点か。KPMGの調査によると、グローバルが図3、日本が図4の結果となった。こちらもグローバルと日本の違いを見るうえで図示された順位に注目したい。
両図を見れば一目瞭然、上位の内容が大きく異なっている。グローバルで1位の「イノベーションの促進」は日本だと5位、同様に、2位の「顧客志向の強化」は9位、3位の「タレントマネジメント」は17位、4位の「破壊的テクノロジーの導入」は12位といった具合だ。
一方、日本で1位の「投資家報告の妥当性の向上」はグローバルだと16位、同様に、2位の「サイバーリスクの最小化」は11位、3位の「業績評価の適正の向上」は9位、4位の「パートナー/アライアンスの関係管理」は10位と、CEOの意識の違いが顕著に表れた格好となった。
こうした結果を比べると、グローバルでは「攻め」の姿勢を強く感じるが、日本では「守り」の姿勢が目立つ。ただ、日本の1位や3位に挙がっている内容については、このところ国内企業において不正会計が相次いだことや行政の方針などによって、コーポレートガバナンスが厳しく問われていることが背景にあると考えられる。
両図に挙がっている項目も先述した懸念事項と同様、多くがデジタルトランスフォーメーションと深く関わっている。「ビジネスのデジタル化(テクノロジー変革)」や「よりデータ重視になること」といった項目はその最たるものだが、これらについてはグローバルと日本の順位に大きな差はない。
とはいえ、グローバルで上位の「イノベーションの促進」や「破壊的テクノロジーの導入」に象徴される攻めの姿勢を日本も迅速に打ち出していかないと、それこそグローバル競争に生き残れなくなってしまうのではないかと危惧する。
とりわけ、イノベーションの促進を全社に向けて力強く掲げ、実践に向けて陣頭指揮を執るべきなのは、ほかでもないCEOの最も重要な役目である。企業におけるデジタルトランスフォーメーションも、イノベーションの促進に向けたCEOの確固たる心構えと覚悟があってこその話だ。日本のCEOには、あらためてその点を肝に銘じて大いにリーダーシップを発揮してもらいたいものである。
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