第21回 ブロックチェーンを生かしたクラウドストレージの安全策:クラウド社会とデータ永久保存時代の歩き方(1/2 ページ)
データが拡散するほど危険になると思いがちなクラウド時代のストレージにおいては、逆にこの状況に合わせた技術の活用で安全になる可能があります。今回はブロックチェーンの特徴からクラウドストレージの技術を解説します。
ブロックチェーンは次世代のクラウドストレージとなり得るか?
さて、前回説明したブロックチェーンの特徴を見て、「いったいクラウドストレージと何が違うの?」と思われた方もいるでしょう。今回はその理由を解き明かします。
ブロックチェーンでは、トランザクションを記録する台帳が安全に分散保存され、一部の台帳のデータが改ざんされても、それ以外の台帳と比較することでそのデータが正しいかどうかを確認できるという特徴に触れました。クラウドストレージサービスにも分散ストレージがあります。本連載で何度かに分かって解説してきた「オブジェクトストレージ」です。
ブロックチェーンの分散ストレージとしては、「StorJ」(ストレージと発音)があります。それでは、このStorJとオブジェクトストレージを比較してみましょう。
1.低コスト
いずれも低コストが売りです。しかしオブジェクトストレージは、特定の企業内やクラウドサービスの内部に限定されるのに対し、StorJは個人がだれでもストレージ領域を提供でき、誰でもサービスを利用することができます。
そのため、利用できるストレージの容量も、桁違いに大きくなる可能性もあり、コスト面で有利になると考えられます。
2.地球レベルの分散・拡張性
オブジェクトストレージの特徴の一つのが「Geo Scale」です。「地球レベルでの分散」とも表現できるでしょう。これは、データを地球上の複数サイトに分散して、大規模な災害やネットワーク障害が発生してもデータが読み出せる仕組みです。同様に一番近いサイトからデータを読み出すこともできるので、読出し速度という意味でも効果的です。
StorJの場合も、同じように世界中に分散してデータを配置できます。さらに特定のベンダーだけの設備だけでなく、StorJに参加してストレージを提供するクライアントの数を考えると、オブジェクトストレージやそれを利用したクラウドサービスと比較して、拡張性が格段に高いといえます。
具体的な数字で見ると、世界中のクライアントのストレージ容量は25万ぺタバイトに達するといわれています。これが全部利用可能なストレージ容量だとすると、世界のクラウドストレージプロバイダートップ5の総容量を全て足しても、20倍以上の開きがあると推定されています。
自分のストレージが他人に使われる?――ちょっと気持ち悪い気もしますが、電力自由化で電気が売れる時代、使わないときのクライアントPCのリソースやストレージを切り売りするというのは、もしかしたら今後一般化してくるのかもしれません。
関連記事
- 第20回 大量データで逆に安全? 注目されるブロックチェーンの仕組み
たくさんのデータが拡散することでリスクが高まると思いがちですが、意外にもその状況に対応する技術を活用すれば、むしろ安全になると期待されています。今回はFinTechで注目されているブロックチェーンとストレージの関係をひも解いてみましょう。 - 第5回 ファイルがなくなる? データの配置や保存の仕組みがどうなるか
これまではクラウド社会で大きく変わりつつあるデジタルデータの扱い方、その注意点について話してきました。今回からはIT側から見た理想的なデータ保存形式について解説していきます。 - 第6回 オブジェクトストレージを解読する その特徴とは?
クラウド時代において主流となっていくオブジェクトストレージを詳しくひも解いていきます。今回はその特徴について見ていきましょう。 - 第7回 オブジェクトストレージを解読する “無限”にためる使い方
前回はオブジェクトストレージの特徴を解説しましたが、今回はそのような特徴からどのような使い方ができるのかをひも解いてみます。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.