顔認識、面白くて実用的な技術へと進歩(2/2 ページ)
最近では人間の体を使った認証技術への注目が高まりつつあります。その中でもカメラで表情を読み取る「顔認証技術」にはどんな特徴があるのでしょうか。まずは10個のメリットです。
6.相貌失認の支援
人間は顔認識を反射的に行うのではなく、認識技術を身に付けます。私たちは赤ちゃんの頃に、人を区別する方法を学ぶのです。しかし、誰もが同じように習得できるわけではありません。実際、認知障害(相貌失認)の場合、自分自身や身内などの見慣れた顔すら認識できません。
こうした症状に苦しむ人たちに支援の手を差し伸べるのが、顔認識システムです。顔認識機能を搭載した(スマートグラスのような)ウェアラブルデバイスを使えば、会話した人たちの顔を日々記録し、その人の簡単な説明を表示させることができます。
7.ギャンブル依存症患者の保護
2011年、Ontario Lottery and Gaming Corporationは、ギャンブル依存症患者がオタワ唯一のギャンブル場「リドーカールトン競馬場」の誘惑を断ち切ることができるよう、救済に乗り出しました(リンク先はいずれも英語記事)。
顔認識システムを使って、競馬場で24時間記録される録画データと、ギャンブルをやめさせてほしいとオンタリオ州に自己申請した依存症患者の顔とを比較します。顔が一致した場合は警備員に通報し、患者をそっと施設の外へと連れて行きます。
8.未成年者のタバコおよびアルコールの購入防止
2007年、日本では未成年者が自販機でタバコを購入できないよう、顔認識技術を採用しました(英語記事)。内蔵カメラを使ってしわの数、骨格、皮膚の状態など、さまざまな点で顔を検証し、大人と未成年者を区別して未成年者の購入を阻止しました。
しかし、若者は大人の写真を使うという抜け道をすぐに発見してしまいました。その1年後、英国の小売りチェーンBudgensが、スーパーマーケットの1つに似たようなシステムを導入し、子供がアルコールを購入するのを見つけようとしました(英語記事)。その後の経過報告がなく、おそらく試験導入は失敗に終わったと見られます。
それから10年経った2016年、顔認識技術の欠点がいくつも解消されました。例えば、Mobile World Congress 2016でMasterCardはセルフィー写真を使った新しい認証システムを発表し、(少なくとも同社は)通常の写真ではごまかせないとしています。技術が進化すれば、顔認識でこうした問題を解決できるようになるでしょう。とはいえ、まだ開発中の技術ですので、本当にどの程度信頼できるのかはまだわかりません。
9.常連客へのおもてなし
顔認識は維持費のかかるシステムで、ソフトウェアに加えて品質の高いカメラ、サーバなどのインフラ一式を必要とします。ですが、その価格は年を追うごとに下がっています。マーケティングの専門家は、こうしたソリューションがカフェ、ホテル、遊園地などの公共の場所で近いうちに導入されると断言しています。
ユニバーサルスタジオジャパンは、年間パス保持者を対象に、顔認証による入場チェックを実施しています。また、一部のホテルでは、顔認識システムの機能を既に検証し始めています(英語記事)。このシステムでは、逮捕歴のある万引き犯がホテルに入館した場合はパトロール中の警備員に通知し、常連客がホテルに近づいてきた場合はロビースタッフに連絡します。
10.写真の整理
最後に、最も普及している活用事例をご紹介します。Apple、Google(リンク先はいずれも英語記事)、さらにはFacebookも独自の顔認識システムを使用し、写真に写る人物を風景と区別し、利用者を認識し、カテゴリー別に写真を整理しています。
以上、いずれも顔認識システムがもたらした良い活用事例をご紹介しました。技術が進歩すれば、私たちの世界もさらに楽しく面白くなるでしょう。ただし、この技術は、恐ろしい展開を招く可能性もあります。次回は、顔認識技術が悪用されるとどうなるのか解説します。
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