「AWSの支払いはこれで」――クラウドの普及でクレカ業界に新たなチャンス?:週末エンプラこぼれ話(1/3 ページ)
クラウドの普及でビジネスが変わるというのは、よく聞く話ではあるが、どうやらクレジットカード業界にも影響を与えているようだ。クレディセゾンが新たなビジネスチャンスを見いだしたのは、AWSを利用しているベンチャー企業だった。
「カードの限度額に引っ掛かって支払いができず、サービスがストップしそうな会社があるんです……! 何とかなりませんか?」
クレディセゾン ネット事業部 データマーケティング部の磯部泰之さんの元には、AWS(Amazon Web Services)の社員やベンチャーキャピタルの投資家からこんな相談が、頻繁に寄せられる時期があった。
Webやスマートフォンアプリなどでサービスを展開するITベンチャーは、固定費のかかるITインフラを持たず、クラウドを利用しているケースがほとんどだ。中でもAWSのシェアが高いが、利用料の支払い方法がクレジットカードか米国の口座への海外送金に限られる。
そのため、特に社歴が浅く、法人名義でのクレジットカードを持つことができないような会社では、社長の個人名義のカードで支払いを行い、カードの限度額が問題になるケースが増えているのだという。時代の変化で新たなニーズが生まれている――磯部氏はこの問題に目を付けた。
ビジネス用クレジットカードのニーズが高まる2つの理由
「ベンチャーの方から、『法人用のカードを作りたいんだけど、銀行や他のカード会社に頼んでも、ベンチャーだと審査に通らないので作れない、何とかしてくれないか』と相談されることが、すごく増えてきたんです」(磯部さん)
磯部さんは、ネット事業部の新規事業担当として、アライアンス先となるベンチャー企業と関わる中で、このような話を聞くことが増えたという。同氏によれば、立ち上げ期のベンチャーにおいて、2つの理由でビジネス用クレジットカードへのニーズが高まっている。
1つはAWSや各種SaaS、Facebook広告の出稿など、海外のサービスの利用が増えたことだ。大企業であれば日本の代理店に支払う場合も多いが、小さな会社の場合はカードで直接支払いをするケースが多い。
AWSをはじめとするクラウドは低コストで導入できると言っても、新しいゲームをリリースしたときなど、「予想以上のヒットで費用が膨らんで、限度額のせいで支払いができずにサービスが止まってしまったらどうしよう……」といった悩みを持っている会社が少なくないのだ。
関連記事
- データ活用に本腰のセゾン、なぜ「Tableau」と「Azure」を採用したのか
社内のデータを活用するため、約1年かけてプライベートDMPを構築したクレディセゾン。その裏にはセルフサービスBIの導入や、社内初のクラウド導入といったさまざまなチャレンジがあったという。 - クラウド会計ソフト「freee」、セゾンカードのクレディセゾンと提携
freeeとクレディセゾンは、相互のユーザー向けに各種優待サービスを提供する。カード会員はfreeeの年間プランを2カ月間無料で延長できるほか、freeeのユーザーには、カード入会でギフト券をプレゼントする。 - 慣習にとらわれるな! “業界初”を打ち出し続けるクレディセゾン
一橋大学大学院の大薗教授が「ポーター賞」受賞企業のユニークな競争戦略を分析する。本稿ではクレディセゾンのクレジットカード事業をピックアップする。 - 買い物直後にクーポン配信、JCBがクレジットカードで「O2Oビジネス」を始めたワケ
クレジットカード業界に転機が訪れている。カード払いに対応する店舗が一般的になってきた今、カード各社がサービスで差別化を図る方針に切り替えつつあるのだ。国内大手のジェーシービーが今秋、決済システムとビッグデータを連携させたクーポン配信サービスを始めた。その狙いはどこにあるのか。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.