「システム開発地図」でトレーサビリティーを導入しよう! 第1回:もう迷わないシステム開発(1/5 ページ)
システム開発を進める上で強力なトレーサビリティーツールとなる「システム開発地図(System Development Map)」について解説します。第1回目は、システム開発にトレーサビリティーの導入が必要な背景やメリットを考察します。
はじめに
業務システムの開発に携わっている皆さん、こんにちは。システム開発や保守をやっていると毎回同じようなことで問題になったり、作業が滞ったりしますよね。例えば、
- 発注者がなかなか要求を確定してくれない(そもそも何がしたいの?)
- 要件定義段階での情報が不足していて設計が進まない
- 設計工程のはずなのに要件定義をしている
- 実装段階で外部設計をしている
- テスト段階なのにそれまで聞いてもいなかった仕様がでてきて作り直しになってしまう
などなど。
システムの発注者であるお客さま側も、システム開発に多額の投資をしているのに
- 要求したシステムが全然仕上がってこない
- システムのリリースが遅れたためビジネスチャンスを逸してしまう
- 少し機能を追加したいだけなのに改修費用が高額なため依頼できない
という問題を抱え、納期遅れの発生、品質担保ができない、工数が余計にかかってしまうといったQCDに関わる実害を引き起こす恐れさえあります。
なぜ、こんなことがプロジェクトの度に繰り返されてしまうのでしょう?
考えられる理由の1つとして、プロジェクトに関わる人々(システムの発注者から開発者までを含む)がプロジェクトの全体感や各フェーズの成果物イメージを共有できていないというのが挙げられます。これらが共有されていないと、
- 現在のフェーズではどのような成果物が必要なのか
- そして現実にはどういう成果物が作成されているのか
- 作成されている成果物にヌケ・重複などの問題はないか
- 要求したことがちゃんと設計に反映されているのか
などが把握できません。これは、要求が設計に反映されているか、設計がシステムの機能としてきちんと実装されているか、トレーサビリティー(追跡可能性)が取れていない状況なのです。
トレーサビリティーのため、プロジェクトに関わる全員で共有できる道しるべ、地図のようなものが欲しくなりませんか?
そこで、この記事では「システム開発地図(System Development Map)」というツールを紹介します。システム開発地図は、システム開発の全行程を地図にしており、成果物の要素間の関連まで俯瞰できる地図です。この地図が実際の開発プロジェクトでどのように役立つのかを具体的に示していきます。
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