なぜDMPは必要か、そしてなぜDMPで失敗するのか:【新連載】DMP成功まで、あと1センチ(2/2 ページ)
「DMPって何か失敗している企業が多いらしいし、手を出すのが怖い」――。そう考える人は多いと思いのではないでしょうか。とはいえ、彼らが失敗したポイントはほんのささいな、そしてすぐに修正できるケースが多いのも事実です。
「未知の未知」からインサイトを発見するためにDMPを活用する
「Lean Analytics」(著者:アリステア・クロール、ベンジャミン・ヨスコビッツ)という本の中で、ドナルド・ラムズフェルド元国防長官の「unknown unknowns」(未知の未知)という発言が分析に関する名言として紹介されています。以下のマトリクス図を見てください。
多くのマーケターが日々向き合っているのは「既知の未知」の部分でしょう。昨日のCV件数、先週のCTR、先月の訪問者数。知るためのリポートが山のように届くようになっているはずです。一方でDMPは「未知の未知」を脱するためにあります。
例えば、コンビニのおでんが秋に一番売れるのは、今になっては常識ですが、実際に誰かが始めるまでは「未知の未知」だったはず。気温が下がり始める時期と商品の売れ行きの相関関係に注目した人は、インサイトを発見する持ち主だったといえるでしょう。
つまりマーケターが(恐らく顧客自身も)気付いていない「未知の未知」から、データに基づき課題を発見し、筋の良い仮説を立てる役割をDMPが担っています。
そう考えると、DMPの成功事例があまり出回らない理由も分かります。データドリブンな組織に成長した企業にとって、DMPは今やマーケティングの根幹を成すものです。成功した理由を聞こうにも、継ぎ足しの秘伝のタレが自慢の鰻屋さんに「タレの成分を解析させてくれ」と言っているようなもので、口が重くなるのは当たり前の話でしょう。
それは失敗ではない。成功する途中で歩みを止めたにすぎない
では、どうすればDMPをうまく導入できるのでしょうか。以下の図は、私がDMPについて取材する過程で発見した「3×3の落とし穴」です。DMPに関する問題は、大抵この3×3のマス目にマッピングできます。広告主をユーザー企業、代理店をSIerと読み替えると分かりやすいかもしれません。
「経営陣を説得できない」「情報収集だけで終わってしまう」「情シスとマーケの仲が悪い」「インサイトが発見できない」「目的がデータを集めることに変わってしまった」――。こんな言葉を見てドキっとした方はいませんか?
個人的にもったいないと思っているのは、トラブルが起きると自然と“撤退”の選択肢が取られることです。かの松下幸之助は「失敗したところでやめてしまうから失敗になる」と言ったそうです。取材で知った失敗事例も、そこで止めてしまったからこそ“失敗”となったのであり、攻略の方法を変えれば、成功につながった可能性は大いにあります。
あと1センチ手を伸ばせれば――。この連載タイトル「DMP成功まで、あと1センチ」にはそんな意味を込めています。次回は、DMPの計画段階にありがちな話で「DMPを導入しようと声を掛けても“面倒くさそう”という反応ばかりで、なかなか話が前に進まない」という事例をご紹介します。
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