“攻めのIT”に向くのは、どんな人材なのか:ITソリューション塾
デジタルビジネス時代における企業ITは、米ガートナーが提唱する「バイモーダルIT」の「モード1」から「モード2」へ、軸足が移っていくとされている今、求められる人材であり続けるために必要なことは?
バイモーダルITと人材の在り方とは
米ガートナーは、情報システムを、その特性応じて「モード1」と「モード2」に分類しています。
- モード1: 変化が少なく、確実性、安定性を重視する領域のシステム
- モード2: 開発・改善のスピードや「使いやすさ」などを重視するシステム
モード1のシステムは、効率化によるコスト削減を目指す場合が多く、人事や会計、生産管理などの基幹系業務が中心となります。そして、次の要件を満たすことが求められます。
- 高品質・安定稼働
- 着実・正確
- 高いコスト/価格
- 手厚いサポート
- 高い満足(安全・安心)
一方、モード2は、差別化による競争力強化と収益の拡大を目指す場合が多く、ITと一体化したデジタルビジネスや顧客とのコミュニケーションが必要なサービスが中心となります。そして、次の要件を満たすことが求められます。
- そこそこ(Good Enough)
- 速い・俊敏
- 低いコスト/価格
- 便利で迅速なサポート
- 高い満足(分かりやすい、できる、楽しい)
この両者は併存し、お互いに連携することになりますから、どちらか一方だけに対応すればいいということではありません。ただ、ユーザー企業のITへの期待は、モード1からモード2へのシフトが進みつつあることも考慮しなければなりません。つまり、モード1に関わるビジネスで収益を上げられるうちに、モード2への取り組みを進め、人材の再配置やスキルの転換を推し進めていくことが必要となります。
その際に注意すべきは、業務要件を確実に固め、要求仕様通りにシステムを開発する従来のモード1のやり方が、モード2ではそのまま通用しないことです。
不確実性の高まるビジネス環境において、事前に要件を完全に固めることはできません。そのような状況にあっても現場のニーズに臨機応変に対応し、俊敏・迅速に開発や変更の要求に応えなくてはなりません。そのためにはアジャイル開発やDevOpsを積極的に取り入れ、この状況に対応するしかありません。
モード1では、「現場の要求は中長期的に変わらない」ことを前提に要求仕様を固めますから、ビジネスの現場と開発をいったん切り離して作業を進めることも可能です。しかし、変化を許容するモード2の対象となるシステムは、ITとビジネスの一体化が進んでいることもあり、ビジネスの現場とシステムの開発は密であることが求められます。そして、ITの立場からビジネスへの提案をしていくことが、これまでに増して求められるようになります。つまり、ビジネスの成功にどう貢献すればいいのかを、ITの立場で考え、そのゴールを業務の現場と共有して開発や保守、運用を進めていかなければならないのです。
求められるスキルチェンジ
このようなモード2に対応できる人材は、ビジネスプロセス全体を見渡し、ビジネスの成功に貢献できる仕組みの設計ができる人でなくてはなりません。一方で、これまでのような特定領域での経験の蓄積に依存した仕事しかできない人は、やがてクラウドサービスや人工知能に置き換えられていくでしょう。
さらには、超高速で簡便にシステムを開発、運用できるツールやサービスを使いこなす現場ユーザーが増えていくことも想定しなくてはなりません。このような代替手段に置き換わる仕事の需要が減少することを想定し、スキルチェンジを進めていく必要があります。
この変化は加速することはあっても、とどまることはありません。その現実を真摯(しんし)に受け入れることです。「まだ何とかなる」は、大変リスクの高い判断になることを覚悟しなくてはなりません。
著者プロフィル:斎藤昌義
日本IBMで営業として大手電気・電子製造業の顧客を担当。1995年に日本IBMを退職し、次代のITビジネス開発と人材育成を支援するネットコマースを設立。代表取締役に就任し、現在に至る。詳しいプロフィルはこちら。最新テクノロジーやビジネスの動向をまとめたプレゼンテーションデータをロイヤルティーフリーで提供する「ITビジネス・プレゼンテーション・ライブラリー/LiBRA」はこちら。
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