DMP、効果を問われて大ピンチ?:DMP成功まで、あと1センチ(3)(2/2 ページ)
DMPを導入しようとした際に、上司に“売上にどれくらい貢献するの”と聞かれて、言葉に詰まった経験はありませんか? どうすれば、この障害を乗り越えられるのでしょうか。
実はCPAが改善する、LTVが向上するといった「アクション」に焦点を当てた提案はあまりオススメできません。確かに導入効果を数字で表現することができますが、それは「既知の領域」だからこそ試算ができるもの。「これはDMPじゃなくてもできるよね?」と反論されてしまえば、もうどうしようもありません。
インサイトの発見とは「A/BテストでCVRを1%改善する(リノベーション)より、新しい顧客層を見つけてCV件数を5倍にする(イノベーション)作業に近しい」と考えています。具体的な細かい数字を掲げてしまうと、自然とその数字が一人歩きしてしまい目線が下がってしまいがちです。
半年ほどして、上司から「あの数字は達成できたの?」と聞かれて言葉に詰まるのがオチでしょう。そもそも、未知の領域に投資をする際にROIを詰めすぎるのはナンセンスなのです。
小さな実績を積み上げて“既成事実”を作るのが近道
そして、いざ導入を進めるときの“特効薬”は「スモールスタート」です。予算も人も時間も、数字が大きいから目立つのであって、気にならない程度に規模を小さくし、その上で結果を出して規模を大きくしていくアプローチが有効でしょう。
1つの部門内で完結するぐらいの規模で始めることの最大のメリットは、何度でも失敗できることだと思います。部署を横断するような規模でDMPを導入してしまうと「早く結果を出さないと!」というプレッシャーが日に日に高くなってしまうのです。
組織の法則として、関わっている部門の「数」と成功への「プレッシャー」は比例するといわれています。部門をまたぐほど“よそ行きの顔”になり、目標も壮大なものになっていきます。「失敗は成功のプロセス」という本音も、「せっかくの投資だし早く成果をあげないと!」という建前に押しつぶされてしまいかねません。
一番良いパターンは、「スモールスタート」で始めて、小さな実績を積み重ねながら「そんな発見があったのか」と理解者を増やしていくことです。
「温かいお弁当が売れる時間帯と飛行機のフライト時間に相関が見られました」「……もしかして、機内で匂いが広がるのを嫌っているからかな? だったら匂いが充満しないおかずのお弁当にすれば、もっと売れるんじゃない? これって発見かも。DMPって面白い!」
このようにして理解者が増えると、DMPがある状態が“日常”へと変わっていきます。人間の脳は「変化を嫌い、現状維持を好む」といわれています。見たことも触れたこともないDMPは組織内の大勢にとって変化と言えます。関わる人数が増え、大げさに扱うほど、その変化は劇的なものになるでしょう。変化に対する抵抗も増えるはずです。
ですが、変化に気付かないレベルで日常に少しずつ浸透し、気付けばそこにいるとなると、抵抗も少なくて済みます。外堀を埋めるとも言いますね。今回紹介したのは、あくまで1つのテクニックです。真正面を切って、大手を振って歩くだけがプロジェクトの進め方ではないことが伝われば幸いです。
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