「情報くれくれ君」が導入プロジェクトに失敗する2つの理由:DMP成功まで、あと1センチ(4)(2/2 ページ)
「情報を集めるだけ集めて、何も動かなかった」「比較表を作ることが目的になってしまっていた」――。システム導入ではよくある話ですが、DMPも例外ではありません。いつの間にか時間ばかりが過ぎていく、といった状態にハマらないためには?
例えば、「DMP」という単語のみを対象にして情報を集めていたら、それ以外の情報は見落とすことになるでしょう。
「私たちが気付かないことをデータから導くため、あらゆるデータを集約して分析している」とマーケターがインタビューで答えていれば、それはDMPと言えますが、ここには“DMP”という言葉は出てきません。この“DMP”という単語のみを追っていると、間違いなく見落としてしまいます。カエサルの言うように、私たちは“知ろうとしていることしか知れない”のです。
つまり、1人で行う情報収集には限界があるのです。冒頭に「この観点では調べた?」というやりとりを紹介しましたが、自分だけで考えた範囲では「漏れ」が発生するものです。収集自体は1人で行うにしろ、人を集めて、どういう情報が必要か聞いた方が成功する確率は高くなります。
特にDMPをはじめとするデータ活用の場合、データを収集するIT、それを活用するビジネスの両方の側面があるため、自然と関係者(ステークホルダー)が多くなります。自分がマーケ部門だとすれば、営業、製造、情シスといったさまざまな部門の目線が欠かせません。
1つの部門だけの視点で情報を集めてしまうと、いざ全社展開しようにも「これは他の部門では使えないね」という話になりかねません。
実際、DMP構築の相談をしたいとベンダーの元を訪れた人が、費用感を聞いて「思っていたより0が1つ多い」と驚いて帰ってしまった、という話を聞いたことがあります。相談された側は「言われていたデータ量なら、システム基盤は『Redshift』か『TreasureData』を使うことになる。普通、これぐらいの費用はするのに、社内の情シスには聞いていないのかな?」と思ったそうです。
集め方が間違っていると、いくら情報を集めてもきりがありません。前進するためには、どんな情報を集める必要があるのかをしっかりと考えましょう。
情報くれくれ君に「秘伝のタレ」は公開できない
もう1つ理由を挙げるなら、第1回で述べたようにDMPがマーケティングの根幹を成すために、ツールベンダーやSIerが“通り一遍”の説明しかできないことです。
情報収集という理由だけで「秘伝のタレ」は公開できません。ましてや、DMPを作るかどうか分からない段階で、事例を知りたいと言われても、ツールベンダー側は「この話を理解してもらえるだろうか?」と二の足を踏むことがあると聞きます。
分かっていないことを分かっていない人に、分かってもらおうとする努力を、なぜ利害関係が発生するか分からない相手にやらなければならないのか? というビジネスとしての素朴な疑問を抱くのは当然かもしれません。
一番良いのは、ごく小規模でもよいので、自ら手を動かしてみることです。まずはデータを集めて、データから仮説を立ててみて、そのためにどれくらい時間とコストが掛かったか計算してみましょう。手を動かしてみてこそ気付くことが、きっとあるはずです。
情報が降ってくるのを待っているだけの“情報くれくれ君”に世間は厳しいですが、自ら血を流して苦しんでいる人には「こうしてはどうか?」とアドバイスをくれるのも、また世間です。情報収集だけで終わらせないためには、集めるだけではなく、「実践するために分からないことを聞く」という姿勢が大切でしょう。
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