Microsoftのスマホ戦略に変化の兆し、2017年はどうなる?:Microsoft Focus(2/2 ページ)
「Lumia」シリーズに代わって、高スペックなビジネス向けハイエンドスマホ「HP Elite x3」を投入するなど、Microsoftのスマートフォン戦略に変化の兆しが見えている。
社員のスマホ使用に見るMicrosoftのモバイル戦略の基本姿勢
しかし、iPhoneの使用は許しても、アプリについては、Microsoftが提供する個人・法人向けのクライアントアプリであることが前提だ。「Microsoft Office」アプリは、iPhoneやAndroid向けにも提供されており、Microsoftの社員も日々の業務で活用している。そして、これらのデバイスのセキュリティと管理体制を徹底し、そこにもMicrosoftのサービスなどを活用している。
また、個人所有のiPhoneを使って開発されたiPhoneアプリ向けにも、品質向上テストプログラムなどを実施しているという。
実は、ここにMicrosoftのモバイル戦略の基本的な姿勢が示されている。
米国時間の2016年11月30日に開催された年次株主総会で、米Microsoftのサティア・ナデラCEOは「われわれはモバイル製品への注力を止めることも、ペースを落とすこともしない。今後なすべきことは、われわれが違いを見せつけられる分野へ注力することである」と前置きし、「さまざまなデバイス向けにMicrosoftのソフトウェアを提供することが重要である。Windows Phoneユーザーへのサポートを縮小するようなことはしないが、同時により大きなシェアを獲得しているモバイル製品のプラットフォームがあることも認識している。われわれはそこに向けてMicrosoftのソフトウェアを提供する重要性を認識しており、今後一層、このアプローチをとっていく」としている。
デバイスよりも、アプリ・セキュリティ・管理でビジネスを展開するのが、Microsoftのモバイル戦略の肝なのだ。
では、今後もMicrosoftからスマートフォンは発売されないのだろうか。
実は、ナデラCEOは同年次株主総会で、株主の質問に答える形で「モバイル製品については、他社と違いを持った機能や差別化できる形態で投入できないか、という点に努力を傾け続ける」と発言している。差別化できるハードウェアが開発できれば、再びMicrosoftからスマホが登場する可能性があると示唆されているようにも受け取れる。
目指すは真のユニバーサルプラットフォーム?
2016年12月8日に中国深セン市で「WinHEC Shenzhen 2016」が開催され、そこでMicrosoftは、Qualcommとのパートナーシップを通じて、「Windows 10」をARMアーキテクチャに対応させると発表した。これが推進されれば、PCにもスマホにも分類できないようなWindows 10デバイスが登場する可能性がある。Microsoftでは、これを「Cellular PC」と表現。このカテゴリーの製品が広がれば、近い将来にはWindows 10 Mobileというエディションすらなくなり、Windows 10という1つのエディションで、現在のスマホの領域すらカバーする可能性もありそうだ。真のユニバーサルプラットフォームの実現にもつながることになる。
こうした動きを俯瞰してみると、気になるのは、開発がうわさされる「Surface Phone」の存在だ。
低価格モデルのイメージが強い印象を持っていたLumiaは、Microsoftのスマートフォンビジネスとしては成り立ちにくかったが、仮にSurfaceの事業戦略の一環で新たなモバイルデバイスがラインアップされるのであれば、この流れにも合致する。
米Microsoft マイクロソフトデバイス担当のブライアン・ホール コーポレートバイスプレジデントは、「Surface Studio」や「Surface Dial」といったこれまでにない領域の製品を投入したことに触れながら、「今後もSurfaceのラインアップは拡大してくことになる」と語った。
その中にSurface Phoneが含まれるかどうかについては言及を避けたが、現在Microsoftが推奨しているElite x3のように、デスクドックやノートドックの活用によって、デスクトップ・ノートブック・タブレット・スマートフォンという4つのデバイスを1台に統合した用途の提案ができる新たなカテゴリーの製品が創出できれば、話は別だ。
新たなカテゴリー創出という切り口が明確に打ち出せるのであれば、Microsoftのスマホ投入の可能性はまだ残されているといっていい。
関連記事
- 低シェアのWindows 10 Mobile、ビジネス利用で大化けするのか
市場シェアの低いWindows 10 Mobileは、個人ユーザーの間に広まるとは考えにくいが、逆にその状況が企業ユーザーの心を掴んで大化けするだろう。その理由を示してみたい。 - 1つになっていく――Windows 10を愛したくなる理由
あなたの周りにWindowsがいくつあるだろうか。あまり身近で気にしなかったかもしれない。でも、Windows 10はそれを気付かせてくれるだろう。Windows 10を愛したくなる、その理由とは――。 - Microsoft、減収減益だがSurfaceシリーズ売り上げは29%増
Microsoftの10〜12月期決算は、一般向けPCの販売鈍化とドル高の影響で2桁台の減収減益だった。「Surface Pro 4」と「Surface Book」の発売により、Surfaceシリーズの売上高は29%増と好調。クラウドサービスも5%増だった。 - Microsoft、クラウド好調/Windows不調で減収増益
Microsoftの7〜9月期の決算は、売上高は12%減の203億7900万ドル、純利益は2%増の46億2000万ドルの減収増益だった。PC市場の縮小が続く中、Windowsの売り上げが減少したが、Azureなどのクラウド製品が好調だった。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.