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Windows 10は単なるWindows 7の移行先? 真価を問われる2017年Enterprise IT Kaleidoscope(4/4 ページ)

リリースから1年半が経過したWindows 10にとって、Windows 7のサポートが終了する2020年までのこれから3年間は、まさに真価を問われることになるだろう。Microsoftはどんな施策を考えているのか。

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 さらにMicrosoftは、苦戦するWindows 10 Mobileのスマートフォン分野でも、ARM版Windows 10で巻き返したいようだ。Continuum機能は、外部のディスプレイとキーボード、マウスをつなぐだけでデスクトップPCと同じような使い勝手を得られるが、膨大な資産となっているWin32アプリケーションとの互換性がない。企業などがContinuum機能を目当てにWindows 10 Mobileを導入することはないだろう。

 そこでARM版Windows 10によってx86/x64のWin32アプリケーションが動作するようになれば、スマートフォンでもWindows 10 Mobileが普及していく可能性が出てくる。

 さらに、2017年に期待されるのが、「HoloLens」やVR/MR製品へのARMプロセッサの適応である。Microsoftがサンプルとして出荷しているHoloLensには、Atomプロセッサが採用されているが、低消費電力のARMプロセッサを使用することで、バッテリを内蔵しても、軽量かつ独立して動作するVR/MRヘッドマウント製品を実現できる。スマートフォンに使われているセンサー類なども応用できるし、スマートフォン向けに開発したARM SoC(システム・オン・チップ)のテクノロジーを利用できるわけだ。

 このように期待は膨らむが、スマートフォンやタブレットの分野でARM版のWindows 10が実際に普及するのは難しそうだ。IntelがAtomに代わるモバイル向けプロセッサを提供したり、タブレット向けに低価格なCore Mなどを提供したりするなど可能性はあるものの、ユーザーの間にはWindows RTの“苦い記憶”があるため、実際にARM版Windows 10がリリースされるまでは、評価を下すのは難しい。「フル機能のWindows 10」をうたうARM版Windows 10は本当に機能制限がないのか、RedStone3のリリースを見守りたい。

 またWindows 10をめぐる問題点として、アプリケーションを提供している「Microsoft Store」(以下、Store)の課題も挙げておきたい。

 まだ公開から2年も経たないが、Storeにアプリケーションが充実しているとは言い難い。Storeでアプリケーションを購入したというユーザーは非常に少ないだろう。Windows 10というOSも重要だが、Windows 10を利用するためのモチベーションとなるUWP(Universal Windows Platform)アプリがこの状況では、Microsoftの考える「One Windows」というコンセプトを実現するにはほど遠い。

 今後は開発者にUWPアプリを開発してもらい、ヒットアプリを生み出したり、既存のWin32アプリケーションの後継ソフトウェアとしてUWPアプリに移行してもらったりするための施策が必要だろう。開発サポートやソフトウェアベンダーのリクルーティングなどを今まで以上に積極的に展開することになる。

 UWPアプリが普及しなければ、Windows 10は単なるWindows 7の移行先でしかなく、全く新しいコンピューティング環境が広がることない。これでは、企業がWindows 10へ積極的に移行するモチべーションにもならない。

 繰り返しになるが、Windows 10にとって2017年から2020年までの3年間は、真価を問われる期間になる。WindowsはいまもクライアントOSとして90%近いシェアを占めるため、多くの企業がMacやLinuxに移るとは思えない。Microsoftは積極的にWindows 10のエコシステムを整えていかないと、今までと同じ状況になるだけだろう。Windows 10への移行がうまくいかなければ、またXPの頃と同じように、Windows 7のサポートが切れるタイミングで問題が噴出するような状態を繰り返すことになりかねない。MicrosoftがWindows 10をどう改良していくのか、注視していく必要があるだろう。

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