PCの管理も“丸投げ”できる? 「Device as a Service」とは:Weekly Memo(2/2 ページ)
企業のPCをクラウドサービスと同様に利用できるようにした「Device as a Service」。日本HPが2016年8月に提供開始したサービスだが、今後、他のベンダーも参入して激戦区になるかもしれない。
Device as a Serviceのユーザーメリット
日本HPはこのDevice as a Serviceを2016年8月に国内で提供開始した。その際の発表内容については関連記事をご覧いただくとして、同社でPC事業を統括する九嶋俊一 執行役員パーソナルシステムズ事業本部長兼サービス・ソリューション事業本部長が当時の発表会見で、このサービスによるユーザーメリットを5つ挙げていたので紹介しておこう。
まず1つ目は「費用の平準化」。同サービスは契約期間を通して費用を平準化できるため、予算計画・管理が容易になる。買い取り時の初期導入コストなども平準化される。2つ目は「オフバランス処理」。資産を持つITサービスではなく、サービスとして資産を活用するモデルのため、オフバランス処理となりバランスシートのスリム化が可能となる。
3つ目は「陳腐化リスク低減」。用途に応じたモデルの選定やその使用年数の選択・組み合わせが可能なため、デバイスが陳腐化しないよう期間設定し、ユーザーの生産性確保に貢献する。4つ目は「ライフサイクルサービス」。顧客の要望に合わせたライフサイクルサービスの提供により、煩雑な機器の運用管理や廃棄をメーカーとして責任をもってサポートする。5つ目は「アカウントサービス」。顧客ごとに対応したアカウントSEが、各種管理リポートやさまざまな課題の解決にあたる。
これらのユーザーメリットからも見て取れるように、ミソとなるのは「PCおよびそのライフサイクル管理を一元化したサービス」であることだ。九嶋氏は「こうしたサービスは私の知る限り国内で初めて」と語っていた。
では、サービスを始めてから5カ月ほどたった現在のビジネス状況はどうか。先日の事業戦略会見後、九嶋氏に聞いてみたところ、「非常に手応えを感じている。とりわけお客さまには、面倒なPCライフサイクル管理を自ら行う必要がなくなるという点が好評を得ている」とのこと。今後についても「クラウドサービスのさらなる普及に伴ってDevice as a Serviceが広がっていくのは自然な流れだ」と語った。
ただし、「非常に有望なビジネスだけに、こうしたトータルサービスを提供する力のあるベンダーが今後、続々と参入してくるだろう。そうなると、サービスの品質や導入のしやすさが一層問われることになる」とも。そうした競争も見越したうえで同氏は、「先行したHPとしては競合他社の追随を許さないサービスに仕立て上げていきたい」と強調した。
ちなみに、このサービスは図3にあるように、PCだけでなくシンクライアントやモバイルデバイスなども対象となっていることから、Device as a Serviceと呼んでいる。ただ、考えてみるとスマートフォンなどのモバイルデバイスは既にサービス化している。
九嶋氏は、「今後は例えばPCとスマートフォンの境目もなくなり、デバイスとして新たな進化を遂げていくだろう」という。先に示した図2の製品戦略には、そうした進化も織り込まれている。
果たして、クラウド時代を見据えたDevice as a Serviceが企業にどれだけ広がっていくか。新たな参入ベンダーの動きとともに注目しておきたい。
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