2017年、多くの企業は「システム内製化」に舵を切る?:オープンソースビジネス勉強会(2/2 ページ)
今後のIT業界に大きな影響を与える3つのキーワードから、2017年にどのような変化が起こるかを予測します。
ITエンジニア大移動
Salesforceなどのクラウドの活用や内製化によって、IT業界は大きく変わっていきます。ITエンジニアの流れからその動向を見ていくと、以下のようになります。
- 前述のように「内製化」によって、ベンダーやSIerから、ユーザー企業へITエンジニアが移動していきます。
- 「内製化」や「Salesforceなどのクラウドの活用」によって、従来型のスクラッチ開発による請負業務(システムインテグレーション)は減少するかもしれません。
- 上記のように、従来型のシステムインテグレーションが減少していくため、ベンダーやシステムインテグレーターは差別化が必要になります。自社パッケージやSaaSを開発・提供したり、特定の技術領域に特化したり、ビジネスが変化していくと考えられます。
- 当然ながら、コンシューマー向けITビジネスは急拡大します。Web系企業にITエンジニアが移動します。
従来のベンダー、SIerからユーザー企業やWeb系企業などにエンジニアが移動し、結果としてラボチームのような形になるのではないか、ということを示しています。
中小企業向け市場(SMB市場)の活性化
従来のSMB(Small and Medium Business)市場は、パッケージビジネスが中心でした。しかし最近では、多くの優良なクラウドサービス(SaaS)が登場し、急速に普及しています。
これは期待を込めてですが、SaaSが普及し、API連携が容易になれば、中小企業でも各システム間の連携やさまざまな自動化が可能になるかもしれません。
中小企業のIT活用は遅れているので、この分野の市場が活性化すると、日本全体の生産性向上につながると思います。
SIerの崩壊
公共分野や金融業界では従来とあまり変化はないかもしれませんが、その他の業種におけるSIerは、ユーザー企業の(内製化による)ITエンジニアをサポートするための組織に変わっていくでしょう。
具体的には、少人数のラボチームでの開発が増えるのではないかと予想します。また、中小企業向けのラボ開発も増えるでしょう。
システムインテグレーターはどうするべきか?
では、今後システムインテグレーターはどうするべきでしょうか。以下のような戦略が考えられます。いずれも差別化が重要です。
- 公共・金融分野に特化する
- ユーザー企業からパートナーとして認められるような価値を提供し、他社と差別化する。例えば、ユーザー企業へ新規ビジネスの提言や共同事業など(コスト削減ではなく、共に成長するための提案ができるかどうか)
- 多数のラボチームを運営する組織
- 自社製品、自社サービスの開発
- 特定技術に関するコンサルティング
著者プロフィル:寺田雄一
(株)オープンソース活用研究所 所長。 IT業界の多段階請負構造の改革を進めるため、30社以上のIT企業に対してマーケティング支援「マジセミ」、採用支援「マジキャリ」を行っている。マーケティング支援はセミナーを中心に行っており、年間200回を目標に開催。詳しいプロフィルはこちら。
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