東北大学とNECが産学連携、実データを活用しAIの社会実装を推進
東北大学とNECはAIの社会実装を目的にした産学連携を進める。プラント保全や不良品検知、産業用ロボット向け画像認識などの分野での実装を目指す。
東北大学とNECは、2月24日、AI領域における共同研究や地域の人材育成などを強化し、産学連携によるAIの社会実装を推進していくと発表した。
この連携では、東北大学が保有している知見や、実験から得られた膨大な実データを、NECの最先端AI技術群「NEC the WISE」を用いて検証していく。この取り組みを通じて社会インフラやプラント設備の保全技術領域におけるAI活用や、東北地域の企業とのAI実証環境の共同構築・運営を進める。
保全技術領域では、東北大学 流体科学研究所とNECで、「非破壊検査領域におけるインバリアント分析技術の適用研究」を2月から行う。
インバリアント分析技術はNEC独自のAI技術。大量に収集したセンサーデータの中に埋もれている、システムの特徴を表す普遍的な関係性(インバリアント)を、対象プラントやシステムのドメイン知識に頼らずに自動的、かつ網羅的に抽出してモデル化する。さらにモデルと一致しない「いつもと違う」挙動をサイレント障害として検知する。今回の連携では、プラント運転や検査、実験から得られた膨大なデータを、同技術を活用して分析する。
地域企業とのAI実証環境の共同構築、運営では、東北大学 大学院工学研究科情報知能システム研究センターにNECのディープラーニング技術「RAPID機械学習技術」を提供し、同センター内のAI実証環境を整備した。
同技術は、事前に手本となるデータを読み込むことで傾向を自動で学習するため、データの分類・検知・推薦などの高精度な判断が可能となる。大規模なマシンリソースを必要とせずにサーバ1台から分析処理が可能。この環境を使い、東北の地域企業各社が保有する画像やテキストデータを分析するなど、実業務に活用し、製造業分野における不良品検知、産業用ロボット向け画像認識システムなど、IoTによる生産性の向上を実現していく。
地域経済の活性化には地元の製造系企業の生産性向上が欠かせない。大学での研究成果や実データを最新の技術に活用することで、ものづくりの現場へのAIの実装がスピードアップできる。また、そのことで地域企業が世界中の企業から注目され、さらに収益力をつけていくことも期待できる。
関連記事
- AIが生み出す安心を“東京2020 Ready”のレベルへ――NEC・新野社長
2016年、AI関連のソリューションを立て続けに発表したNEC。技術革新のスピードが高まっている今、実用化を念頭に置いた研究開発が重要になるという。2017年は、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会で実用に耐え得るレベルへと人工知能の技術を磨くことが1つの目標になるようだ。 - 企業の「デジタル変革」を導く2つのカギーー人工知能、そして“共創”
NECの年次カンファレンス「C&Cユーザーフォーラム&iEXPO2016」が開幕。ビジネスのデジタル化をどのように実現するか、をテーマに社長の新野氏が講演を行った。そのカギとなるのはAI、そして他社との共創なのだという。 - AIは人を単純作業から解放し、創造性を引き出す存在に――NEC新野社長
NECの年次カンファレンス「iEXPO KANSAI 2016」で新野社長が講演。人工知能は人間を単純労働から解放し、ポテンシャルを引き出す存在になると述べ、さまざまな導入事例を紹介した。人工知能と人間が協力することで、さまざまな社会課題を解決できるというのが、同社のスタンスだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.