神田の居酒屋にロボットが来た日――“飲みニケーションロボット”の作り方:【総力特集】人とAIの共存で進化する「おもてなし」(1/4 ページ)
東京・神田の居酒屋「くろきん」に卓上型コミュニケーションロボット「Sota」が登場。飲み会を盛り上げる仕掛けとして、同店の来店者増に一役買っているという。居酒屋にロボット、このプロジェクトはどのようにして始まったのか。その裏側に迫った。
東京・神田駅から徒歩1分のところにある居酒屋「くろきん 神田本店」。何の変哲もないこの居酒屋に2016年12月、1体の小さなロボットがやってきた。
そのロボットの名前は「Sota」。高さ30センチ弱の小さなロボットだが、乾杯の音頭を取ったり、上司にツッコミを入れたり、店員さんに絡んだり、一緒に飲み会のメンバーとして場を盛り上げてくれるのだ。
Sotaを設置したテーブル席を、ロボットと飲める「飲みニケーションロボット席」として予約を受け付けたところ、予約が殺到し、来店者数も増加。実証実験として開始したプロジェクトから一転、常設することが決まった。
飲み会を一緒に楽しむロボットが大人気
ロボットが飲み会を盛り上げると言っても、ロボット自身が急に何かを話すというわけではない。Sotaには、ヘッドウォータースが開発するクラウドロボティクスサービス「SynApps」が実装されている。来店したお客が専用アプリ(SynApps Mobile)をインストールしたスマートフォンを使って、Sotaにコメントを言わせるというシステムだ。
アプリでは選択肢で選べる定形文言のほか、好きな文章を入力して話させることもでき、自分の顔写真をアプリに登録すれば、次の来店時にSotaから“常連さん”として名前を呼んでもらえる。
くろきんを運営するゲイトによると、ロボットとの会話を通して客が仲良くなり、常連が増えるのが狙いだという。
「居酒屋で接客するスタッフは、1日100人以上のお客さまと出会います。お店のスタッフにとってお客さまは1対多数の存在ですが、逆にお客さま側からすれば、スタッフとは1対1の関係です。この間は仲良く話をしたのに、次に来たときに『初めて』という顔をされたら、さびしく感じてしまう。もちろんお店側としては覚えたくないわけではありませんが、人間には限界があります。そこでロボットの力を借りようと考えたのです」(ゲイト広報の尾方里優さん)
導入の効果は顕著だ。来店者数は前年比で12月は10%、1月は14%増加した。もちろん“物珍しさ”から予約する客が多いのも事実だが、「この席を予約するために、飲み会の予定を動かしたという例もある」と尾方さん。Sotaの集客力の強さを物語るエピソードだ。
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