AIを“暴走させない”ための4つの要素:Microsoft Focus(1/2 ページ)
人工知能(AI)が本当の意味で身近で便利なツールになるには、人間にとって「信頼できるかどうか」がカギ。Microsoftは「信頼できるAI(Trusted AI)」を掲げ、その要素として「FATE」が重要だとする。4つの要素が含まれるという「FATE」とは?
米Microsoftのデイヴィッド・ハイナー氏が来日し、Microsoftが考える「信頼できるAI(Trusted AI)」の現状や課題、そして今後の展望などについて説明した。
同氏は、法務部門において、プライバシー、通信、人工知能、アクセシビリティ、オンラインセーフティ分野規制関連などを担当。人工知能に関しては、ポリシーフレームワークの開発を推進する役割を担っている。
人工知能は人間の能力を拡張する技術
人工知能が社会に貢献する事例の1つとしてハイナー氏が挙げたのは、ヘルスケア分野での活用だ。
例えば人工知能は、X線で撮影された画像を理解し、リンパ腺にがんの可能性があると認識できるが、このエラー率は7.5%。優れた病理学者のエラー率は3.5%にとどまっており、現状では人の方が勝っている。しかし、この両者を組み合わせた場合のエラー率は、0.5%にまで減少することが分かったという。
ハイナー氏の考えは、“人工知能は人間の能力を置き換えるのではなく、拡張できるものでなくてはならない”というもので、人間が持つ能力と共感力、判断力を支援するものになる必要があるという。
「教育、ヘルスケア、交通、農業など、人工知能はあらゆる分野で利用されることになる。配管工にはレンチが必要なように、人工知能を多くの人が必要なツールとして利用できるようにしたい。いずれは全ての人が人工知能を使えるようにすることが大切」(ハイナー氏)
その一方で、人工知能の利便性が高まるとともに、社会的な問題や倫理的問題が発生することも指摘する。
「新たなテクノロジーが誕生すると、社会的な課題や倫理上の課題が必ず生まれてくる。人工知能は知識や学習、推論、意思決定を支援し、世の中を良くすると信じているが、同時に課題が生じることも認識しておくべき」とし、「人工知能はこの数年で大きく進化したが、併せて倫理に関する議論も必要になってきた。Microsoftでは、この1〜2年で社内委員会を設置して議論を始めている」と述べた。
関連記事
- 連載:「Microsoft Focus」記事一覧
- コレ1枚で分かる「人工知能に置き換えられる職業と置き換えられない職業」
近い将来、自分の仕事は人工知能やロボットに奪われるのでは……。そんな懸念を覚える人が出始めている今、“代替される仕事、されない仕事は何か”を解説します。 - 時間の使い方を可視化し、AIがアドバイス 「MyAnalytics」は働き方をどう変える?
「生産性の向上に目を向けることなく、単に労働時間だけを減らしても、ビジネスの成長を伴った働き方改革は実現できない」――。そう指摘するマイクロソフトが、AIを使った働き方改革を提案している。その中身は? - 街のラーメン屋でも導入できる “月額3万円のAIロボット”の働きぶりは
AIやロボットというと、「大企業が多額の投資をして使うもの」というイメージがあるが、2017年はそれが覆るかもしれない。街の小さな店舗でも気軽に導入できる月額3万円のAIロボットが注目を集めている。 - デジタル改革で変わるべきはIT、そして人――日本マイクロソフト・平野社長
多くの企業がデジタル改革の必要性に気付き始めた2016年。クラウドファーストの製品や技術、ワークスタイル改革のノウハウでそれを支援するのが日本マイクロソフトだ。企業がデジタル改革を成功させるために欠かせない要素として、同社社長の平野氏が挙げたのは……。 - IBMと真っ向勝負? MSが「コグニティブ」に本腰、勝算は?
マイクロソフトがAI分野の新たな取り組みとして「コグニティブサービス」を始動した。「コグニティブ」と言えばIBMが先行してビジネス展開しているが、果たして真っ向勝負となるか?
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.