基幹業務をAzureに移して大丈夫なのか MSが出した回答は:Microsoft Focus(2/2 ページ)
基幹業務システムのクラウド化が進む中、日本マイクロソフトがAzureを拡張することを明らかにした。どんな企業にとってメリットがあるのか。
大規模基幹業務システムとSAP HANA向けにAzureを拡張
日本マイクロソフトはこのほど、国内リージョンで基幹業務向けにAzureのサービスを拡張することを明らかにした。
既に2017年1月から、最大32コアバーチャルCPU、0.5TBメモリを搭載した仮想マシン「Gシリーズ」の提供を、東日本リージョンに限定した形で開始し、これまでに約20社がSAPアプリケーションをAzure上で稼働させているという。
今回のサービス拡張では、大規模基幹業務システムにも対応可能な仮想マシンとして、最大128バーチャルCPU、3.8TBの「Mシリーズ」を提供開始するのに加え、SAP HANAにチューニングした専用ハードウェアサービスとして、960CPUスレッド、最大20TBメモリを提供する「SAP HANA on Azure(Large Instances)」を提供すると発表。いずれも、2017年12月末までにサービスを開始し、東日本と西日本の両リージョンで提供するという。
米Microsoft Azureチームのコーポレートバイスプレジデントを務めるジェイソン・ザンダー氏は、日本のデータセンター基盤を大幅に拡張することで、基幹業務のワークロードに対応した、より広範なメニューを提供できるようになると説明する。
「基幹業務のワークロードでもクラウドパワーを生かせるようになり、デジタルトランスフォーメーションを促進できる。特に今回の拡張は、SAPアプリケーションに最適化し、高性能で拡張性の高いクラウドを提供。SAPユーザーのクラウド移行を促進することになる」(ザンダー氏)
これまでのGシリーズは、開発、テストあるいはPoC(概念実証)用途に最適化したものであったが、Mシリーズによって本番環境での利用が促進され、さらに、Large Instancesによってスケールとパフォーマンスを提供できるようになる。
「開発、テスト、デモ、トレーニングとしての利用だけでなく、災害対策やアーカイブ、本番環境、さらにSAPデータの高度な分析にも利用できる。例えばAzureを使うことで、開発やテスト環境のTCO(総保有コスト)を40〜75%削減でき、これまで数週間、数カ月かかっていた環境構築を数分でできるようになる。また、アーカイブ用のストレージコストを60%削減できるほか、『Azure Machine Learning Studio』や『Power BI』を活用したインサイトも可能になる」(ザンダー氏)
クラウドのトータルメリットに注目
日本マイクロソフトが今回のような製品を提供できる背景にあるのは、MicrosoftとSAPの20年以上に渡るパートナーシップだ。SAPは子会社であるSuccessFactorsでAzureへの対応を図るなどの投資を行っている。Azureは、50以上のコンプライアンス認証に対応し、IoTやAIなどの分析基盤を提供。SAP HANAをはじめ、OracleやSQL Serverを利用して既存のアプリケーションを取り込むことができる。
「だからこそ、SAPソリューションにはAzureが最適である」と、ザンダー氏は強調する。
Gシリーズの販売目標についても、提供開始時には「今後3年間で250社への導入を目指す」としていたが、今回の発表で「今後3年間で400社」へと大幅な上方修正を図っている。その多くは製造業になると想定しているという。
SAP HANA on Azure(Large Instances)は、ベアメタル環境で提供し、99.99%のSLAを実現する。
「99.99%“以上”のSLAを求める基幹業務システムのユーザーがいるのは事実だが、Large Instancesでは、最低限のSLAとして99.99%を達成することを重視した。この背景には、99.99%以上の可用性を求めるよりも、99.99%の可用性を実現しながら、クラウドが実現するトータルメリットを重視するといったユーザーの変化がある」(ザンダー氏)
こうした企業ユーザーの意識の変化も、基幹業務のクラウド移行が進んでいる理由の1つだ。
Azureのサービス拡張によって、基幹業務のパブリッククラウド移行を本格化させるための地盤が、本当の意味で整ったといえる。いよいよ、日本の基幹業務のクラウド移行が本番を迎えそうだ。
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