人工知能って結局何なの? 知能と知性の違いから考える:【新連載】真説・人工知能に関する12の誤解(1/3 ページ)
人工知能という言葉が“マーケティング用語”のような形でちまたにあふれる昨今、人工知能に対してさまざまな誤解が生まれています。この連載では、いろいろな角度から、それらの誤解を検証していきます。
2017年、人工知能(Artificial Intelligence)という言葉をビジネスの現場で聞かない日はありません。車を自動で運転し、消費者の質問に何でも答え、マーケティングの効果予測を行い、人の採用をサポートし、農作物の病気を予防する――。まるで人工知能は万能で、あらゆる問題を解決するヒーローのようです。
一方で、人工知能と呼ばれているシステムを詳しく調べると、単なる重回帰、あるいは決定木にすぎないものも多く、デジタルマーケティング領域で人工知能を研究している私としては「それで人工知能と呼んでいいの?」と考えさせられるケースも少なくありません。
昨今、人工知能という言葉が、会社や製品をアピールするための「マーケティング用語」として使われる機会が増えています。それ自体は悪い話ではないと思いますが、中身が伴わない人工知能の乱造は、悪貨が良貨を駆逐するような事態につながらないでしょうか。
本連載では「人工知能」というテーマに対して、主にビジネス向けのAI活用という観点から、仕事、働き方、社会への影響、システム、データの取り扱いなど、多くの人が人工知能に抱いている誤解を取り上げます。
「人工知能」とは何か、いまだ定義はできていない
そもそも、人工知能とは何でしょうか。現在のところ、学術的な定義はないと私は認識しています。例えば、2016年に近代科学社から出版された書籍「人工知能とは」では、最先端を走る研究者13人に人工知能の定義を聞いていますが、その回答は意外とバラバラです。なぜでしょうか。
人工知能の研究に携わる多くの研究者は、DNN(ディープラーニング、ディープニューラルネットワーク)やCNN(畳み込みニューラルネットワーク)などの基礎分野、あるいは画像認識や自然言語処理などの応用分野に従事しています。彼らはあらゆる場面で活躍する万能な人工知能(例えば、鉄腕アトムのような少年ロボット)の実現を研究しているわけではなく、知能の一領域における“機械による自動化”を研究しているのです。
「万能な人工知能」というのは、これらの“ピース”が組み合わさったものだと考えてよいでしょう。つまり、鉄腕アトムが生まれるまでには、2段階のカベがあるというわけです。その1段階目が未完成であるため、2段階目の正確な定義はより難しいものになるわけです。
ちなみに、総務省が発表した「ICTの進化が雇用と働き方に及ぼす影響に関する調査研究(2016年)」によると、人工知能に抱くイメージとして、日本では「コンピュータが人間のように見たり、聞いたり、話したりする技術」が最も多いのに対し、アメリカでは「人間の脳の認知、判断などの機能を、人間の脳の仕組みとは異なる仕組みで実現する技術」という考えが最も多いことが分かっています。
ここから分かるのは、人によっても、そしてその人が住む国によっても、人工知能とは何かという定義が異なります。こうした「人工知能とは何か」が定義できないさまざまな背景が、“言ったもの勝ち”な状況につながっているのかもしれません。
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