働き方改革を支える「4種の神器」とは?:コンサルタントが語る組織活性化のポイント(2/2 ページ)
働き方改革によって働き方や雇用の在り方が変化する中、これからの人財管理に求められるものとは? 経営や人事の目線から考察します。
給与支給の仕組み
「給与支給の仕組み」もなくなることはなく、大切なインフラです。勤務や労働に対する対価を支払う仕組みとして、これからも存在し続けると考えられます。
特に日本における源泉徴収の仕組みは、税金を徴収する仕組みとして有効に機能しており、国の大きな財源にもなっています。そのため、働き方や雇用の在り方が変わっても、国が会社や団体などを通して税を徴収する仕組みを崩す(崩れる)とは考え難く、「労働の対価を会社や団体などが払う仕組み」は存在し、推奨され続けるのではないかと考えられます。
働き方改革が進むと、“会社と呼ばれる存在の定義”は、変わってくるかもしれません。その定義は、“単なる物理的な場所”、あるいは“ある共通の目的を持ったコミュニティー”、場合によっては“労働や雇用に関する代理手続機関”などに変化するのかもしれません。しかし、その定義は変わっても、“会社と呼ばれる物体”は存在し続け、その会社という物体を通して給与を払う仕組みはなくならず、むしろ強化されていくのではないかとも考えられます。
人材管理・把握の仕組み
最後は「人材管理・把握の仕組み」です。“働く”の在り方が変わると、今のやり方で回っているものが、回らなくなるときが必ず訪れます。
例えば、働き方が変わり、場所や時間を問わない労働環境が広がると、今は何げない立ち話や伝え聞き、うわさといった方法で情報収集ができている“人”に関する情報は、どんどん少なくなり、場合によっては皆無になることもあるでしょう。つまり、ある人物に関して極めて少ない情報から判断して仕事を依頼し、評価し、昇降格などを行わなければならない、といった時代になるのです。
「社員のキャリアニーズ」「仕事に取り組む姿勢」「仕事や職場に対する不満」「ある社員同士の関係性」など、人事を進めていく上での判断や選択に用いられている情報は、“人同士の物理的な接点から収集される情報”が多く、その情報に基づいて判断や選択をされる傾向が強いのが現状です。
例えば、山田太郎さんが退職するとします。山田さんの後任者を検討する際、「あいつが良い」「こいつはどうだ」などと、日々収集している情報をたどって決められることも少なくありません。また、後任者を検討する会議を責任者数人で行う場合、出席する責任者が変われば、たどられる記憶も異なるため、後任に選ばれる人物が変わることも十分にあり得ます。つまり、判断や選択の基になっている情報は、記憶をたどって引き出され、その記憶情報によって決定されているわけです。これが今の人事の実態ではないでしょうか。
今は、ある場所、ある時間に人が集まって仕事をしているため、その記憶情報もそれなりの蓋然(がいぜん)性があり、納得感のある人事ができているかもしれません。しかし、場所や時間にこだわらずに仕事が成り立つようになると、その蓋然性は崩れ、“劇的に納得のいかない人事”になってしまいます。
働き方改革が進むにつれ、人材の情報を把握する仕組みは、人事的な実務面においても、判断や選択の蓋然性においても、欠かせないインフラになっていくと考えられます。
働き方改革が進む中、マネジメントの在り方や、帰属意識の醸成の方法、仕事の成果の定義と評価の仕方など、今の人事の在り方を前提とした課題についてよく議論がなされています。しかし、今、本当に人事や経営が取り組むべき課題は、これからの変化に備えたインフラの整備なのかもしれません。
著者プロフィール:アクティブアンドカンパニー
『個人(タレント)』と『組織』の両方に適切な刺激を与え、行動変革を促すことにより、業績向上に寄与する「組織活性化コンサルティング」「タレントマネジメントの推進」を行っています。
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