「テレワーク・デイ」に「働き方改革」のおいしいところを考える(3/3 ページ)
官民あげての「テレワーク・デイ」が、日本でも初めて実施された。「働き方改革」がうたわれる中で、どのような役割を果たしていくのだろうか。
今回実施されたテレワーク・デイは、まだ初回だが、テレワークの生い立ちは古く、すでに規模の大小を問わず、さまざまな企業が行っている。今回訪れたレノボ・ジャパン(以下、レノボ)でも、7月24日に「第3回全社テレワーク・デイ」を実施した。同社は2005年の創立時からテレワークを導入しており(当時は上限が週1回)、回数無制限のテレワークも、2015年にテスト導入、2016年4月には本格導入した。
第3回となる全社テレワーク・デイでは、東京・秋葉原のオフィスに勤務している正社員と派遣社員の合計約800人が参加し、当日のオフィスはまさに“もぬけの殻”という表現がぴったりと当てはまる状態だった。
レノボでは、テレワークを活用することで、下記のような事業の活性化を期待しているという(レノボ・ジャパン 人事担当執行役員/NECパーソナルコンピュータ 人事担当執行役員常務 上南順生氏)。
- 育児や介護などワークライフバランスの改善
- 従業員の居場所を問わない安否確認
- 積極的な外部交流で事業の活性化(攻めのテレワーク)
特に2017年度は、テレワークを活用することで介護離職や単身赴任の解消に向けた施策として、「介護離職者ゼロ宣言」と「ふるさと人事」を始めている。
同社では介護世代と規定する40代以上の社員割合が77%と高く(平均年齢は男性が46.6歳、女性が42.7歳)、高齢化社会が進む中で、優秀な社員を確保するべくテレワークを活用している。勤務場所や時間を柔軟性に持たせることで、介護や子供の看護、出産、育児といった、ライフステージに合わせた柔軟な働き方を提供しており、個別の家庭事情を考慮して職場と人事が協調して進めているという。
一方のふるさと人事は、同社の単身赴任者ほぼ全員が40代以上の介護世代に属し、うち22人が5年以上も単身赴任が続いている現状課題の解消を目指して導入された。単身赴任の解消ができなくても、月に1〜2週間のふるさと勤務をテレワークで対応、あるいは移住もできないかなど多様な勤務形態を検討して実施したところ、社員や家族の満足度や健康面の改善、介護理由の離職を防止できたとして成果を報告した。
同社では、旧来のIBM時代からテレワークに対する下地があり、テレワークの導入に伴って人事制度や評価制度を変えたことはなく、人事からガイドラインを提供した程度にとどまっているという。
また、「テレワークにとまどったり、ネガティブだったりする人が管理職の人にまま見られる。しかし、チームメンバーの様子は見ていても、仕事の内容まで踏み込んで状況を把握しているケースは少なく、思い込みが多かった。実際にテレワークを行うと上司に日々の進ちょく報告や相談が上がるようになるので、そういった気付きを得られるのが全社でテレワークを実施するメリットだ。場所や時間ではなく、どこにいても社員同士がつながって、ともに仕事を作り上げていくという意識や気持ちを大事にしている」と上南氏はテレワークのポイントを指摘した。
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