あなたの会社の取引先データ、コンプライアンス的に大丈夫ですか?:今こそ見直す「データガバナンス」(3)(2/2 ページ)
データガバナンスやMDMを見直すポイントを紹介する本連載。今回はコンプライアンスの視点から、MDMがなぜ重要なのかをお話しします。
実質的支配者への対応が進むヨーロッパ
さらに、コンプライアンスチェックに求められるデータは規制強化によって広がりを見せています。
2016年4月に報道された「パナマ文書」の流出事件は記憶に新しいと思いますが、一連の騒動によって、米国政府のブラックリストに掲載されている人物と企業が文書内に存在したことが明らかになり、国際的な資金の流れと、最終的に利益を享受する個人への透明性強化への流れが加速したといわれています。
これらの最終的な利益享受者は「実質的支配者(Beneficial Owner:BO)」と呼ばれており、そのスクリーニングを行うことは、今やKYCプロセスの事実上の標準として広まりつつあるのです(「3:資本系列の確認」)。
英国の決済代行業者D社は、規制当局や株主へ自社のコンプライアンス体制が確立していることを証明するために、効果的なKYCプロセスの構築を行いました。EUは第4次マネーロンダリング指令によって、いち早く、明示的にBOのチェックを国内法へ反映することを求めています。
当社は、決済代行というビジネスの特性上取引先が非常に多く、従来型のデュー・デリジェンス手法(財務や法務、人事など6種類の視点から、企業の資産価値を測る方法)では膨大な金銭的、時間的コストを要してしまうことから、顧客による自己証明や公知情報だけではなく、第三者機関であるD&BグループのBOデータを導入しています(参照リンク)。
「マスターデータ」は直訳すれば“主要なデータ”であり、こうした取引先の周縁に存在する利害関係者をマスターデータといえるかどうかについては異論もあるでしょう。しかし、記事冒頭でも触れた通り、コンプライアンスの潮流は世界的に加速しており、企業活動におけるKYCプロセスの重要性が増すことで、取引先データに求められる要求レベルもまた、広がりを見せていることは間違いありません。
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