IoTとAIで実現する“社員の幸せ”と“生産性向上”を両立する働き方改革:データのじかん(2/3 ページ)
働き方改革を正しく評価するには、削減した残業時間やテレワークの回数をはかるだけでなく、「会社や社員にとって良い結果をもたらす行動につながったかどうか」を見極めることがカギになる。その成果をはかる方法とは?
組織活性度と生産性との関係が分かったら、次にポイントとなるのは「どうしたら組織活性度が上がるのか」ということでしょう。
組織活性化支援サービスでは、組織内の会話に注目しています。
名札型ウェアラブルセンサーでは、赤外線センサーを使って、それを付けている人同士が向かい合ったことを記録します。また、会議室などにあらかじめ赤外線ビーコンを設置しておくことで、同時刻にその場所にいた人たちの情報も記録できます。
「誰と誰が一緒にいた」という情報と、各自の身体の動きの記録が組み合わさると、誰と誰がよく会話をしているかということや、人によって話し手と聞き手どちらに回ることが多いか、といったことが見えるようになるのです。
田島さんによれば、このサービスに興味を持つ企業の中には、自社内のコミュニケーション不全に課題を感じているケースも多いそうです。
「皆さんは仕事でメールを使いますよね。それが行き過ぎて、何でもメールで済ませる傾向に悩まれている経営層の方は多いんです。隣の人にひとこと言えば済むようなことも、全部メール連絡になってしまっている。そうなると、その場で聞けばすぐに分かるようなことでも考え込んでしまったり、すぐ近くに同じことをやっている人がいることを気付かずに余計な仕事をしてしまったり……。そんな非効率を解消するために、もっと横のつながりを醸成したいと、このサービスの導入を相談されることがあります」(田島さん)
また、ある企業では、社員たちがトップダウンの指示によって動き、ボトムアップの提案が少ないという社風を抜本的に変えるという目的を持って組織活性化支援サービスを導入したそうです。
7つの本部に属する180人が1カ月間、名札型ウェアラブルセンサーを身に付けて行動データを取ってみたところ、本部をまたいだ役員同士の会話は多いものの、部長同士や課長同士の会話が少なく、各本部が担当役員の指示によって動くというトップダウンの傾向が実際に確認されました。
また、社員が話し手ではなく聞き手に回っている時間が多い方が、組織活性度が高いという結果も出ました。これは、自分で提案するよりも指示されて動く方が安心して仕事に集中できる社員が多いということです。
この結果を見て、「今後も社員たちが気持ちよく仕事に集中できるよう、明確な指示を与えることにしよう」という考え方もできるかもしれませんが、この会社は違いました。これからは部門を超えた横のつながりの中からボトムアップの提案が出てくるような組織に変えていこうという意思のもと、企業文化を変えるための施策を実行したのです。
具体的には、本部間のコミュニケーションを役員から部課長に委譲したり、会議の出席者を最低限に絞った上で全員が発言することを徹底したりして、話し手と聞き手が固定化せずに双方向のコミュニケーションが生まれるように仕向けていきました。
その後にもう一度、行動データを取得したところ、部課長レベルで本部を超えた会話が増え、社員同士の会話も双方向型のものが増えるという効果が見られたそうです。
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