営業部門のデータを“真っ裸”にしたら、全員のモチベーションも成績も上がった:データのじかん(2/3 ページ)
常に共通の指標となるデータをみんなの目に見えるようにすることが重要――そう語る元トップセールマンが語る、成果が上がる組織のデザイン法とは?
なぜExcel管理ではうまくいかなかったのか
MAPPAの導入以前も、データの共有をしていなかったわけではありません。
2006年にはSFA(営業支援システム)を導入し、それと並行してExcelで各案件の進捗状況を集計していました。
「以前は1〜2週間単位でデータを集計していましたが、当然ながら現実の状況は刻々と変わるんですよね。Excelで受注見込みの数字を見て『予算達成できそう』と考えていたら、後からデータが更新されてポコッと数値が減っている。そこで慌てて『他に案件ある?』とみんなにメールや電話で確認してまわると、『まだ入力してないんですけど、実はあります』というのが出てくる……。今はリアルタイムに数字が見えるようになって、会議でもダッシュボードに表示されているものを正として話を進めるようになり、情報の活用度が上がった結果、メンバーのデータ入力率も100%近くになりました」
Excelは最も優れた分析ツールの1つではありますが、入力や集計に時間がかかるExcelのデータは、実際の状況との乖離(かいり)がどうしても生じてしまうので、次の行動を判断する根拠としては中途半端なもので、脱Excelが必要だと感じていました。用途によっては脱Excelすべきことがあると考えています。リアルタイムでデータが更新されるMAPPAは使い勝手がよく、マネジメントで実際に使われるからデータ入力の意欲も上がり、ますます使えるデータになっていったというわけです。
トップセールスの成功モデルを他のメンバーにインストール
社内の情報システム部に頼らず、現場で作り込めるというのもMAPPAの特徴です。最初に導入して以降、久我さんのデータの見方を反映してどんどんバージョンアップしてきました。営業部門の成績が上がったもう1つの理由は、トップセールスだった久我さんの考え方や行動パターンが、MAPPAを通じて他のメンバーにも移植されたことにもあるのです。
B2Bのビジネスをしている会社の営業担当者の中には、「毎月のノルマ達成のために月末が忙しい!」という人も少なくないでしょう。しかし久我さんいわく、それは非常に効率の悪いやり方です。
「入社4年目くらいのとき、当時の副社長が僕の営業のやり方を分析したことがありました。その頃の常識は、お客さんをいっぱい持っている古参の営業の方が強いというもので、若い僕がトップセールスを続けていたのが不思議だったんですね。それで分かったのは、僕だけ月初に一番売上が上がっていたということです」
久我さんは、意識的に月初に売上が上がるよう、顧客と商談を進めるタイミングを調整していたのだそうです。
「月末に向かって売上が上がっていくのって、最後に粘って、頑張ってゴールしているということで、効率が悪いんです。お客さんには、何とか今月の発注にしてほしいと電話でお願いしたり、社内でもすぐに出荷できるよう根回ししたり、調整のためのコストがものすごくかかる。月末じゃなくて月初にピークを持ってくるサイクルにすることで、内部リソースを最大限活用でき、そんな調整が必要なくなるんですよ。やっていることは単純で、月末に売れるものを月初にずらしているだけです。でも、無理を通すためのコストがからないので、効率よく回していけるのです」
早めに見通しを立てて効率を上げるという久我さんの成功パターンは、部門のマネジメントにも踏襲されています。もともと下期に売上が偏っていた組織も現在は上期に比重が高くなるようになったのです。
「常に翌期の見込みを意識しながら営業活動ができるように、MAPPAでは翌期に受注できる見込みの案件が今どれだけあるかということが見えるようにしています。そして、その年の予算に関しては、上期でほぼ達成の見通しを付けてしまうんです。そうすれば、下期には今期の売上を心配せずに翌年に向けた営業活動ができるわけです」
メンバーに対しても、MAPPAで表示されるデータが、あるべき行動を促すしかけになっています。営業の仕事は、新規案件の獲得から、進行中の案件の管理、すでに購入した顧客のアフターフォローまで多岐にわたります。どれも必要ですが、目の前にある急ぎの仕事にばかり取り組んでいると、将来の売上をつくり出すことができません。MAPPAでは、新たに獲得した見込み案件や、ほぼ受注できる状態に確度が上がったものなど、営業担当者ごとの活動の成果が週次で表示されています。その結果、みんなが将来の売上につながる営業活動を意識できるようになったそうです。
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