熟練工の経験や勘所を解析データで技術資産に――大谷機械製作所、CAEソフト「LS-DYNA」を導入
大谷機械製作所は、富士通九州システムズ(FJQS)のCAEソリューションを導入。非線形構造解析ソフトウェア「LS-DYNA」の活用により、鍛造機械の強度解析を内製化し、解析データのシミュレーションによるものづくり体制を構築した。
鍛造(たんぞう)機械の製造・販売を手掛ける大谷機械製作所(大谷機械)は、ものづくり体制の刷新・強化を目指し、富士通九州システムズ(FJQS)が提供するCAE(Computer Aided Engineering)ソリューション、非線形構造解析ソフトウェア「LS-DYNA(エルエスダイナ)」を導入した。
LS-DYNAは、陽解法によって構造物の変形や弾靭性などを時刻履歴で非線形動的に構造解析するソフトウェア。衝突・衝撃解析、落下解析、塑性加工解析、貫通・破壊解析などに優れており、自動車や航空機の衝突テストをはじめ、機械、電機、精密機器、重工業、土木、建設など、さまざまな分野で製品の安全性対応や高品質化などに活用されている。
金属組織を切らずにたたいて延ばす「鍛造」は、自動車から建築、機械・工具まで、ものづくりに欠かせない技術。創業70年余の歴史ある鍛造機械の専門メーカーである大谷機械では、鍛造機械のアンビル(固定台)やフレーム(支柱)の強度解析を協業メーカーに委託してきたが、鍛造機械メーカーとして満足できる解析データを得られないことが課題だった。
今回、より高強度の製品開発や的確な補修を可能にし、機械ユーザーに説得力ある提案を行えるように、LS-DYNAを導入し、定量的で分かりやすい解析手法を確立して、鍛造機械の強度解析の内製化を図った。
鍛造業界全体に解析データの活用例がなく、参考になるモデルがないことや専任の解析担当者がいないことを踏まえ、解析手法を確立するだけでなく、その手順をノウハウ化することも目指した。FJQSの有償支援サービスを活用しながら、解析手法から手順書の作成、報告書のレビューまでを鍛造解析の1つのロールモデルとして構築。また、報告書は専門用語を使わず、応力部のデータもサーモグラフ的にカラー表示にするなど、理解しやすい見せ方を実現したという。
大谷機械では、熟練の職人工が培ってきた技術の経験や勘所を、解析データで検証し、可視化することで、自社の技術資産として蓄積し、未来へ継承することも可能になったとしている。
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