AIの勉強をする必要はない。AIが向こうからやってきてくれるから。:Mostly Harmless(1/2 ページ)
やりたいことを指示するだけで、AIが自動で最適な形に進化し、必要なものを作り出す――。そんな時代がもうすぐそこに来ているようです。
この記事は大越章司氏のブログ「Mostly Harmless」より転載、編集しています。
Googleが、AIの知識がなくてもAIを活用できるというサービスを始めました。
つまり、AIを使うためにAIを勉強する必要がなくなったということです。
これはコンピュータの歴史からいって、正常な進化といえるでしょう。技術は必ずコモディティ化するからです(AIのコモディティ化の速度は過去に例がないほどに速いとは思いますが)。2017年あたりは、どんどんAI技術が進んで、一般の人がそれについていけずに不安になるという状況が出始めました。しかし、技術の方から人間に歩み寄ってきてくれているのです。
もちろん、お仕着せの解析だけでは他社との差別化ができないような、競争の激しい業界では別の話でしょうが、AI利用のハードルが下がることはよいことです。今後はこれがさらに進み、さまざまなサービスにあらかじめ(見える形でも見えない形でも)AIが組み込まれているという状況になっていくでしょう。
Ponanza開発者が言う「技術的失業」とは
そんなおり、2017年の「将棋電王戦」で人間の名人に初めて2連勝した将棋ソフト「Ponanza」の開発者である山本一成さんが、ブログに次のような記事を投稿しました。
「Alpha Zero」は、2015年に人間のプロ棋士を破った「Alpha Go」の最新バージョンです。冒頭に紹介したGoogleのAI構築サービスとは直接関係はないとは思いますが、この時期にこういった「AIの自動化」の話が重なったのは、偶然ではないように思います。
山本さんによると、Alpha Zeroは「“人間流”、以前の“コンピュータ流”とは異なる“第3の道”」を歩んできたということです。Alpha GoもPonanzaも「以前のコンピュータ流」に分類されます。過去の棋譜を大量に読み込ませて学習させ、コンピュータ同士を対戦させることで強化するのです。しかし、Alpha Zeroとその原型であるAlpha Goは、過去の棋譜は読み込まず、いきなり自分自身との対局を行って強くなっていったということです。
山本さんはこれを「Alpha Zeroは強いだけではなく、全く異なる思考方法でチェスと将棋の山を登ってきた」と表現し、自らについて「多分これが技術的失業なのだろう」とつづっています。これまで山本さん(を含むコンピュータ流の研究者)が極めようとしてきたアプローチとは全く異なるアプローチが圧倒的に有効であるという可能性が突き付けられ、この先はもう、これまでのアプローチの研究を続けることは無意味である(かもしれない)ということが提示された――それを「技術的失業」と表現したのではないでしょうか。
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