仕事時間の半分が社員のITサポート――そんな大京情シスの働き方を変えたAIチャットbot(3/3 ページ)
情シスが本業に専念できるようにするために導入したAIチャットbotは、現場の働き方を変えただけで終わらなかった。
ユーザーの習慣を変えることが課題
hitTOの導入から半年以上がたった今、課題であったIT部門への問い合わせの数は減ったのかというと、まだ目に見える効果は出ていないようだ。
「うちの社員は、何かあったらすぐ電話、という習慣がまだ抜けないんです」と吉田さん。今後は、hitTOの認知度や利用率の向上が今の課題だ。
グループ経営企画部で広報を担当している堀口友恵さんは、「これを使った方が早いと分かってから、どんどん使うようになった」という。「例えばIT関連の申請書類が必要なとき、以前はイントラネット上のQAサイトから探していましたが、hitTOに質問すればその書類のリンクをダイレクトに返してくれるから便利なんです」(堀口さん)
ヘルプデスクやIT部門への問い合わせがそれほど減っていないという一方で、hitTOの利用件数自体は増えているという。
それは、これまでは堀口さんのように、「ヘルプデスクやIT部門の人に聞くほどではない」と自分で問題の解決方法を探していた人たちがhitTOを使っているからかもしれない。そういう意味では、IT部門以外の社員達の生産性向上につながっているようだ。
新たな取り組みに挑戦する風土の醸成にも
「問い合わせ対応の負荷を低減する」という目標の達成はまだ道半ばだが、AIチャットbotへのチャレンジでIT部門が得たものがある。
1つは、ナレッジの標準化だ。これまでは人によって答えられる質問とそうではない質問があったが、hitTOを使うことで新しいメンバーでも問い合わせに対応できるようになった。
また、今回のプロジェクトは、「AI活用の経験値を増やす機会にもなった」(川口さん)という。
「hitTOを導入してみて、『AIを活用するには精度の高いデータをある程度の量をそろえないことには始まらない』といったような勘所がつかめてきたような気がします」(川口さん)
そして、今回の取り組みは、情報システム部門が新しいことに挑戦するマインドの醸成にも一役買っている。
「もともと大京の情報システム部門は保守的な社員が多かったのですが、トレンドの技術を使って新しいことに挑戦するようになってから、だんだん雰囲気が変わってきました。私たち管理職も失敗を責めず、挑戦を促すことを大事にしています。hitTOの導入では、IT賞を受賞したのですが、自分たちがやったことを広報したり、賞にエントリーしたりするのも、社員のモチベーションを上げて活気ある空気を作る上で大事なことだと考えています」(川口さん)
hitTOに関しては、グループ総務部やグループ人事部など、他部署の問い合わせ業務への横展開の準備も始まっている。他にも、グループ全体へのRPAの導入を準備したり、マンション管理の新システムのPoC(Proof of Concept:概念実証)を行ったりと、次々と新しいプロジェクトが生まれているという。
社内の業務改善から顧客への価値の創出に関わるところまで、同社のIT部門は今後も大きな役割を担っていくことになりそうだ。
【聞き手:後藤祥子、やつづかえり】
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