リクルートは大規模VDI導入の“死に所”をどう解決したのか “意外な盲点”との戦い(3/3 ページ)
全国約700拠点で利用する4万5000台ものPCをVDIに移行したリクルートグループ。この大規模な導入プロジェクトのどこに盲点があり、それをどうやって解決したのか――。リクルートテクノロジーズの石光直樹氏が振り返った。
何のためのプロジェクト? 「VDI移行ありき」に陥るな
他にも、プロジェクターに接続するとVDIがフリーズするといった新たな「バグ」にも直面した。「枯れきっていない技術だから、バグは当然。こうしたバグが起きることを前提として考えなければいけない。対策は、まず全体スケジュールに余裕を持たせること。2つ目は、トライアル期間を十分に取り、トラブルが出たときに対応できる仕組みにしておくこと。そして、3点目はベンダーとの関係をしっかり作り、何かあったら対応できるようにしておくことだ」(石光氏)
リソースのボトルネックについては、事前検証をしっかり行っていたこともあり、HDDやメモリ周りではそれほど問題は起きなかった。「自社の利用状況に応じて検証し、しかるべきものを選ぶということを丁寧にやった。そのためか、幸い今もストレージでは性能面の問題は起きていない」(石光氏)。問題はCPUで、「事前にアセスメントを行い、それに基づいて搭載したが、これがとても難しい。動画の再生だけでCPUリソースを大きく食うなど、サイジングは難しい」と述べている。
データの移行については、ネットワーク転送とNASによる搬送という2つの手段を利用して解決したが、「どのタイミングで実施するかというユーザー調整は大変だった。これも早めにやるのがいいと思う」と石光氏。また、プロジェクト全体を通して、「あれもやらなきゃ、これもやらなきゃ」と、タスクがどんどん増えていったことも反省点だ。「本当に必要なのは何か、プロジェクトの要件定義を事前にしっかりしておくことが重要だ」(同)
端末についても留意が必要だった。コスト面の問題もあって、一部では既存のPCを流用したが、無線がつながりにくい、動きがもっさりするといった問題が起きたという。「VDIの操作性は端末に依存する。どんな端末で使うのかも事前に考え、戦略を立てるべき」(同)
最後に石光氏は「プロジェクトを進めていくと、“VDIへの移行自体が目的”になってしまいがちだが、それありきになってはいけない」と、くぎを刺した。業務によっては、どうしてもVDIに不向きなものもあることからリクルートでは、VDIに加え、「Choose your own device」という形で、簡単な手順で利用できるPCやファット端末も用意するなど、ユーザー目線を重視してプロジェクトを推進している。
「何のためのVDI導入なのか――。最も重要なのは、本質を見失うことなく取り組むこと。移行の最終段階になるとVDI移行完遂自体が目的化しがちなので、意識的に現場の声を吸い上げる仕組みを作り、丁寧に対応していく必要がある。それが導入の成功につながると思っている」(石光氏)
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