たかが3カ月、されど3カ月。「freee」の開発も3カ月がポイントに:「3か月」の使い方で人生は変わる(2/2 ページ)
「確実に変化を起こせる最小単位は3カ月」と確信するに至った筆者が生み出した「クラウド会計ソフトfreee」は、Googleで働きながら自力で開発に取り組んだ「3カ月」が出発点となった。
3カ月間でアイデアを具体化、自らの力量に手応えも
そこで、まずは3カ月間で原型となるものを自分で一度作ってみようと、プログラミングを勉強し直して取り組み始めたのだ。日中はGoogleで働いていたので、朝6時に起きて、出勤までの2時間くらいを朝のプログラミングの勉強時間に当てた。さらに、仕事が終わって夜6時から夜中の1時くらいまで費やした。
そのころは4時間くらいしか寝ていなかったが、眠いと思ったことは一度もなかった。テレビゲームにはまる小中学生のように、没頭しすぎて夜中の1時を過ぎても続けてしまうときがあったので、むしろ、やりすぎてペースを崩さないようにすることに気を配っていたくらいだった。
そのときの3カ月間で得られたことは、まずは「freee」というソフトのアイデアを何とか具体化できたこと。そしてもう1つ、「最悪、自分1人でも、そこそこ作ることができるかもしれない」という手応えを得たことだった。
「取りあえず、自分1人だけでも、何となく動くものを作ることができる」という感触を最初に得られたのは、とても大事なことだった。誰かに作ってもらってそれを管理する、というのは自分の性格を考えるとあまりできないだろうと思っていたし、何か問題があったとき、それがどれくらい深刻なのか、自分で分かるというのはとても重要だと思ったからだ。
それに開発のコストは、自分というリソースだけだ。限りなくコストを下げることができるという点でも、「3カ月、まず1人で作ってみる」というのは、結果的にとてもよかったと思う。
ただ、僕はプロのエンジニアではないので、「これは、1人じゃできない。ビジネスとして展開するには、それに耐え得る仕組みを一緒に開発し、運用できる人が必要だ」と思い、次の3カ月のテーマは、「『freee』を一緒に作ることができる仲間を探す」ことへとシフトしていった。
「クラウド会計ソフトfreee」の開発は、その後、僕を含めて3人で走り出し、今では中小企業だけでなく、多くの企業や個人事業主の方にも使われている。その出発点は、Googleで働きながら開発した3カ月だった。人によっては「たかが3カ月」と思うかもしれないけれど、僕にとっては「されど3カ月」で、それは自らの人生を通して痛感していることだ。
●ポイント:
3カ月の集中で「これまでになかったもの」を生み出す
著者プロフィール:佐々木大輔(ささき・だいすけ)
freee(フリー)創業者・代表取締役CEO。1980年東京生まれ。一橋大学商学部卒。大学在学中に派遣留学生として、ストックホルム経済大学(スウェーデン)に在籍。また、インターンをしていたインターネットリサーチ会社のインタースコープ(現・マクロミル)では、データ集計システムやマーケティングリサーチ手法を開発。卒業後は、博報堂でマーケティングプランナーとしてクライアントへのマーケティング戦略の立案に従事する。その後、未公開株式投資ファーム・CLSAキャピタルパートナーズでの投資アナリストを経て、ALBERTの執行役員CFOに就任。2008年にGoogleに参画。日本におけるマーケティング戦略立案、Googleマップのパートナーシップ開発や、日本およびアジア・パシフィック地域における中小企業向けのマーケティングの統括などを担当。中小企業セグメントにおけるアジアでのGoogleのビジネスおよび組織の拡大を推進した。
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