5Gの実用化で私たちの仕事や暮らしはどう変わるのか:『ビジネス2.0』の視点
2020年の実用化を目指す5G、実生活はどのように変わるのか? 総務省が発表した「ICTインフラ地域展開戦略検討会(第5回)」の配布資料から、社会課題等の解決イメージと、“5G×光”で高度化されるインフラで広がる可能性についてまとめます。
この記事は林雅之氏のブログ「『ビジネス2.0』の視点」より転載、編集しています。
総務省は2018年7月11日、「ICTインフラ地域展開戦略検討会 最終取りまとめ(案)」を公表しました。
人口構造の変化やICT利活用の高度化などを踏まえ、2020年の5Gの実用化も見据えて、5Gや光ファイバーなどのICTインフラの地域における利活用方法を幅広く検討し、地域への普及展開を促進するための新たな戦略を策定しています。
主な検討事項は、
- 5G・光ファイバーなどのICT利活用による地域課題の解決モデル
- 5G・光ファイバーなどのICTインフラの今後の地域における整備の在り方
となっています。
「5Gの特徴を生かした地域の社会課題等の解決イメージ」では、(1)高齢者のモビリティ確保、(2)農業など地場産業の興隆、(3)働き方改革、(4)防災・減災などを挙げています。
「ICTインフラ地域展開戦略の全体像」では、5Gと、光ファイバーなどの高度なICTインフラの整備により、地域課題に対するICTソリューションの高度化が期待されるとしています。
次に、5G・光など高度なICTインフラで広がる可能性を、それぞれみてみましょう。
地場産業の興隆 「地場産業の興隆(酒造産業を例とした、生産、販売拠点の次世代ICT化)」では、5G・4G/LTEやLPWA、無線LANを組み合わせ、生産、販売拠点を直結。高度なICTを積極的に導入して生産性向上及び効率化を達成するイメージを紹介しています。
「地場産業の興隆(酒造産業を例とした、生産、販売拠点の次世代ICT化)」の「5G・光など高度なICTインフラで広がる可能性」(出典:「ICTインフラ地域展開戦略検討会 最終取りまとめ(案)」 2018.7)
観光客の誘引 「観光客の誘引(Webサービスを活用したインバウンド誘客)」では、LPWA通信やIoTの普及により、観光客に関するより多様で正確なデータの取得が可能となり、根拠に基づいた効果的なマーケティングが実現。光ファイバーなどの高速通信網が普及することにより、一層臨場感のあるコンテンツ(高精細映像やVRによる仮想探索など)による誘客が可能になるとしています。
教育の充実 「教育の充実(ICTを活用した効果的・効率的な教育の実現)」では、5Gの高速無線通信により、自宅でのタブレット活用がしやすくなり、宿題や自主学習などを含めて総合的なICT学習が可能になる他、5Gによって、大容量の4k/8kの高精細映像が伝送可能となり、他地域のクラスにリアルタイムに遠隔参加ができるようになり、映像教材の利用においても、生物・美術などをより本物に近い形で観察・学習できるようになるとしています。
自動運転の実現 「自動運転の実現(車を持たずに安心して暮らせる交通基盤)」では、5Gなどの高度なICTインフラとAIによって、自動運転車が実現。車両や道路などに設置される大量のセンサーが全て5Gネットワークに接続され、リアルタイムなセンサーデータの共有が可能。周囲の交通状況に対して、動的な車両制御を行うことで、高度な自動運転が実現。自動運転車の運転データは、ビッグデータとして、処理・分析され、ほかの車両や公共交通機関の運行・配車の最適化に活用できるとしています。
医療介護の充実 「医療介護の充実(救急分野の高度化)」では、救急搬送中の救急車内から患者の容体を5Gによる高精細映像で中核病院へ伝送が可能となる他、重傷外傷対応時の受傷部位や心疾患対応時の心電図データを、高精度の動画での共有が可能になるとしています。
安全で安心なまちづくりの実現 「安全で安心なまちづくりの実現(消防防災分野の高度化)」では、5Gの超高速・多数同時接続が可能という特徴によって、ドローンや消防隊など災害対応にあたる行政職員などが身に付けるウェアラブルカメラなどの映像を同時にかつリアルタイムに伝送可能になる他、映像は現場や災害対策本部などの全ての拠点に伝送されるため、傷病者や災害の全体像が即時に把握・共有でき、効果的な避難指示などが行われるとしています。また、5Gが都市圏だけでなく地域に展開されると、5Gを活用した災害情報伝送・共有のシステムは全国で利用でき、災害時においては、地域を越えた自治体間の連携が可能になるとしています。
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