良いものをそろえれば、結果は後からついてくる ――成城石井 執行役員 早藤正史氏:長谷川秀樹のIT酒場放浪記(3/3 ページ)
こだわりの品ぞろえにファンも多いスーパーマーケット成城石井を率いる執行役員の早藤正史氏。そのユニークな商品展開や経営路線の根底にある早藤氏の経営哲学やリーダー論とは。
いかにおいしいものをそろえるか。ブランドは後からついてくる
長谷川: ブランドの考え方について聞きたいんですけど、僕が東急ハンズに入社した時に、「東急ハンズ」というブランドはどうやってできたんですか? というのをいろんな人に聞いたんですよ。そうしたら、ブランディングの部署があった時代はないし、「ハンズらしく」とよくいうけど、その定義もないと。単にみんなが面白いものを仕入れようとしてたら、なんとなくみんなに知られるようになっただけ、というんです。
成城石井さんの場合、ブランドに関しての戦略のようなものはあるんですか?
早藤: 全然ないですね。いい商品を仕入れるということで成り立っている会社なので、大事なのは中身。規定を作ってそれを守るのがブランディングではないですよね。ハンズさんと同じように、おいしいものをどうそろえようかということを考えてやっているうちに、今のようになったということです。
例えばワインって、輸入するときに赤道を通るんです。そうすると熱劣化といって味が変わってしまう。「日本で飲むのと海外で飲むのとでは味が違う」とお客さまから言われて、「それじゃあ」ということで定温のコンテナで運んで、ワイン専用の倉庫で保管するようになったんです。湿度も温度も管理された150万本まで預けられる倉庫で、常に100万本は在庫があります。
長谷川: そうなんですか!
早藤: 品質にこだわるのが大好きで、どこよりもおいしいってことを伝えたい、という思いがあるんですね。
ちなみに成城石井は卸売営業部というのもあって、ワインを有名なホテルやレストランで扱っていただいたり、他のスーパーさんにも成城石井の輸入会社が仕入れたものを売っているんですよ。
長谷川: 面白いですね! そういう事業もあるのか。
早藤: 全国のスーパーさん270店舗くらいに、「成城石井コーナー」というショップインショップのような売場をやっていただいていたりもしています。
逆に、紀伊国屋さんからは、昔からパンを仕入れているんですよ。紀伊国屋さんのキャパもあるので全店ではないのですが、古い店には紀伊国屋のパンのファンというお客さんがいるので、ずっと取り扱っているんです。
だから、そもそも競合店という考え方が本当にないんですよね。みんなお取引さまですから。
長谷川: へぇ、面白いですねぇ。本当に特殊な会社なんですね。
でも、ハンズも競合というのはほとんど気にしていないんですよね。あえて競合店は、というと、一番近いのはロフトさんだと思うんですけど。われわれも定価販売なので、価格での競争はないですしね。
共通点の多い成城石井とハンズ、いつかコラボも!?
早藤: 成城石井と東急ハンズさんて、似てますよね。
長谷川: 今日話を聞いて、そう思いました。ローソンさんよりは俺らの方が絶対似てるね(笑) 今、ローソンから人は来てるんですか?
早藤: 出向の人は来てるんですけど、どちらかというと「成城石井の勉強をしてこい」という感じで若い人が来られています。
長谷川: あ、そういう感じなんですか。
早藤: ローソンのトップの玉塚さんは、成城石井は成城石井のスタイルでやればいいという考え方で、非常に大事にしていただいてますね。
長谷川: そうなんですね。
話は戻りますけど、成城石井さんと東急ハンズとすごく合いそうなんで、コラボ店みたいなこととかやったら面白そうですよね。
早藤: それはやってみたいですね! 喰い合うところもないですもんね。
長谷川: かけらもない(笑)
早藤: テーブルウェアなんかも多く扱ってらっしゃるから、そういうものと食品と一緒に並べたりしたら、面白いですよね。
長谷川: 僕らはフランチャイズの仕組みもあるんで、いろんなやり方ができると思いますよ。
今度ちょっと、うちの店舗開発の者に「こういう話で盛り上がったんだけど」って言っていいですか?
早藤: いいですね。ぜひお話しましょう。
長谷川: じゃあ、今度はその話でお会いしましょう。今日は、どうもありがとうございました!
ハンズラボ CEO 長谷川秀樹氏プロフィール
1994年、アクセンチュア株式会社に入社後、国内外の小売業の業務改革、コスト削減、マーケティング支援などに従事。2008年、株式会社東急ハンズに入社後、情報システム部門、物流部門、通販事業の責任者として改革を実施。デジタルマーケティング領域では、Twitter、Facebook、コレカモネットなどソーシャルメディアを推進。その後、オムニチャネル推進の責任者となり、東急ハンズアプリでは、次世代のお買い物体験への変革を推進している。2011年、同社、執行役員に昇進。2013年、ハンズラボを立ち上げ、代表取締役社長に就任。(東急ハンズの執行役員と兼任AWSの企業向けユーザー会(E-JAWS)のコミッティーメンバーでもある。
関連記事
- 連載:「長谷川秀樹のIT酒場放浪記」記事一覧
- 異業種とのAPI連携で進むみずほ銀行のFintech 規制産業の常識を“よそ者”が変える
FinTech時代に生き残るためには――。多くの金融機関が変革を迫られる中、みずほフィナンシャルグループは、API連携によるオープンイノベーションを進めている。社内のルールも変えながらプロジェクトを進めるキーマンに話を聞いた。 - 客と店のできることが融合? 東急ハンズのiPod touch導入記
ITシステムの内製化などに取り組む東急ハンズが、約2300台のiPod touchによる店舗スタッフ向けシステムを導入した。そこでも同社ならではユニークな発想が込められている。 - 画像認識や音声認識、APIで“いいとこ取り”できる時代に――ハンズラボ・長谷川社長
基幹システムのフルクラウド化という“大仕事”が終わったハンズラボ。次なる目標は、画像や音声認識を取り入れることだという。APIを使って気軽にシステムが組める今、長谷川社長は「システムを“選ぶ”必要性がなくなった」と話す。 - デジタル先進企業の従業員は「意欲」が高く「幸福感」も強い――Arubaが調査
デジタル化が働き方やオフィス改革に及ぼす影響をArubaが調査した。デジタル化が進んだオフィス環境で働く従業員は、生産性はもちろん、仕事に対する意欲と満足度が高く、デジタル化の進んでいない職場の従業員よりも幸福感が強いことも分かった。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.