必要なのは地方分権ではなく「標準化」、これからの行政に求められるITインフラ施策とは:総務大臣政務官/内閣府大臣政務官・小林史明氏(1/3 ページ)
自然災害を大きく印象付ける年となった2018年。災害時および事後の情報インフラの重要性が高まっているが、行政のシステムは使い勝手が悪い。"政界きってのIT通"小林史明氏に、いま必要なITインフラ施策について聞いた。
台風・大雪などの風水害や地震・噴火といった自然災害が多い日本。2018年も1月23日の草津白根山噴火、2月4日に北陸地方を襲った記録的な大雪、4月9日には最大震度5強を観測した島根県西部地震、4月11日には大分県中津市で地下水上昇による山崩れ発生、6月18日には最大震度6弱を観測した大阪府北部地震と、今年前半だけでも日本各地で数多くの自然災害が発生した。
また6月末から7月初旬にかけて西日本を中心に集中豪雨をもたらした西日本豪雨(平成30年7月豪雨)は、6月29日に発生した台風7号によるものだった。平年の台風発生数は7月が3.6個で8月は5.9個だが、今年7月は5個、8月は9個もの台風が発生。8月28日に発生した台風21号は「超大型(風速15m/s以上の半径が800km以上)」に発達して9月4日に日本へ上陸し、近畿地方を中心に多大な被害をもたらした。そのわずか2日後の9月6日には北海道厚真町で最大震度7を観測した北海道胆振東部地震が発生。2018年は、まだ3カ月を残す現時点で自然災害を大きく印象付ける年となっている。
このような自然災害時および事後の情報共有のあり方や情報インフラの重要性が高まっているが、行政のシステムは行政管轄区分や地方自治体ごとに整理されていて、バックエンドもユーザーインタフェースも非常に効率の悪いものになっている。ITが普及した21世紀の現在でも、行政の情報システム不便がなくならないのはなぜだろうか。
NTTドコモ社員から衆議院議員に転身し、現在は総務大臣政務官と内閣府大臣政務官を務める“政界きってのIT通”小林史明氏(自由民主党)に、いま必要なITインフラ施策について聞いた。
ITmedia 7月の西日本豪雨では「特別警報(数十年に一度の異常気象などで甚大な被害が発生すると予想される時に発表)」が270地域に出されるなど大災害となった。地元(広島県福山市)での状況は?
小林史明氏 おかげさまで、一部を除いてほぼ日常生活を取り戻しているが、豪雨後しばらくは、4000人以上の方が避難生活を余儀なくされて大変だった。私もすぐに地元に帰って地域を歩き、支援の要望を聞きながら、市と対応策を協議していた。豪雨当日や当初はいかに避難するかの情報が重要だが、その後はどうやって避難所に行くか、支援物資をどうやって届けるかなど、道路情報が重要となる。だが地域によって情報発信がバラバラで非常に分かりにくく、不便であることを身をもって知った。
ITmedia 近年、国や地方自治体ではWebサイトを通じての情報提供に力を入れているが。
小林史明氏 実際の災害時に自ら使ってみると、国のサイトでは国道と高速道路だけ、県のサイトでは県道だけなど、道路を一覧して確認できず非常に不便だった。それでもまだここまでは地図で確認できたが、市町村のサイトを見ると○○道路や○○交差点といった道路情報が“文字”で書かれているだけ。情報も分散しているし、ユーザーインタフェースも分かりづらかった。結局、トヨタ自動車の「通れた道マップ」や本田技研工業がYahoo!地図に公開している「インターナビ通行実績情報マップ」の方が、通信機能付きカーナビ搭載車から得たプローブ交通情報を基に道路の通行状況を地図上に可視化しているので使いやすかった。
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